# 貧困・格差

「ふとんで年を越したい…」
急増する「見えない貧困」、恐怖の年末年始がやってきた

大西 連 プロフィール
〔PHOTO〕ふとんで年越しプロジェクト2015

必要な支援を整備するためにできること

ここで、冒頭の岸田さんの話に戻ろう。岸田さんと会った2014年の年末年始には「年越し派遣村」のような活動はおこなわれていなかったし、行政の窓口は完全に閉鎖されていた。

都内の各地ではホームレス支援団体等によるさまざまな活動はあるものの、野宿経験のない彼は、支援者やほかの野宿者とともに屋外で暖かくして過ごす「野営」という形での寝泊まりは難しい。

そんな人でも利用できる支援を、ということで、都内のホームレス支援や生活困窮者支援に携わる団体・個人で、「ふとんで年越しプロジェクト」というプロジェクトを、2013年の年末から開始した。

2013年~2014年の年末年始では約20名、2014年~2015年の年末年始では約30名に対して、個室のシェルターを提供し、医療、生活相談等の支援をおこなった。岸田さんはこの日のうちに「ふとんで年越しプロジェクト」のシェルターに入所することが決定し、無事にふとんで年を越すことができたのである。

「ふとんで年越しプロジェクト」は、あくまで年末年始の短期的なプロジェクトであり、各地の支援団体のボランティアメンバーによって活動が成立している。そして、シェルター開設に関する費用等はクラウドファンディングなどの寄付によって成り立っている。3年目を迎える2015年~2016年の年末年始も「ふとんで年越しプロジェクト」を始動する。ぜひ、ご支援を賜りたい。

ふとんで年越しプロジェクト2015 ~誰もが暖かく年を越せるように~
https://motion-gallery.net/projects/futon-toshikoshi2015

とはいえ、この「ふとんで年越しプロジェクト」で支援できる人は、東京で生活困窮する人の、ホームレス状態の人の、本当にごく一部でしかない。限られた資金や人的なリソースで、それこそ手弁当で支えられる範囲は非常に限られているのは事実だ。

昨年は岸田さんを支援できたものの、岸田さんと同じような状況の人は都内だけでも何十人も、場合によっては何百人も(それ以上かもしれない)いるだろう。

支援団体が国や自治体に求めていること

「ふとんで年越しプロジェクト」では、12月に国に対して以下の要望をおこなった。

1. 「年末年始」の閉庁期間中に、各自治体に生活保護申請を受け付ける窓口を設け、申請権を侵害することなく適切な対応をおこなうこと。

2. 上記閉庁期間中に、生活困窮者及び生活保護申請者に対し、必要に応じて、宿泊場所や食事の提供、またはその費用の給付・貸付等を適切に、かつ速やかにおこなうこと。

3. 生活困窮者が上記閉庁期間中に、1及び2の施策を利用できるように、情報発信・広報の活動をおこない、その利用を促進すること。

4. 上記1及び2の事項が適切におこなわれるように、各自治体への周知徹底をおこなうこと。

このうちの、1に関しては、2014年より、東京都は各区に通知を発出し、閉庁期間中でも婚姻届け等と同じように夜間休日窓口等で生活保護の申請を受理することを求めている。

しかし、2に関しては、現状ではなかなか対策が取られていないのが実情だ。私たちの要望の内容は実はこの3年間かわっていない。国は「年末年始に対策をおこなうかどうかは各自治体が判断すること」と言い、自治体は「自分たちだけでは独自の取り組みをおこなうことはできない」と言う。

もちろん、閉庁期間中に窓口を開設し、支援のメニューを利用できるようにすることは、職員の体制、資金等、簡単なことではないだろう。

一方で、とはいえ、2008年~2009年の年末年始、2009年~2010年の年末年始には「年越し派遣村」として、国と自治体が特別な対策をおこなったのは事実である。

そして、2015年4月からは各自治体に柔軟な運用がおこなえるように制度設計されている「生活困窮者自立支援制度」がスタートし、自治体の独自の取り組みはおこないやすい状況は整いつつある。

そう、すでにやるかやらないかは、各自治体の判断に任されている。そして、すこし雑な言い方をすれば、それはすなわち、私たち一人ひとりに、世論に、社会の要請によって支援を整えていくことはできる、ということだ。