不況対策? それとも? 
日本人主婦が日本語教師を目指すワケ

 小学生の息子を持つ駐在員夫人のミサコさん(仮名)と久しぶりに会った。場所は、日本でも有名なカフェの上海店。ランチは、ドリンクとセットで68元。決して安くはないが、外資系企業などに勤めるホワイトカラー層の上海人女性たちでにぎわっている。日本人主婦たちのグループもちらほら見える。

駐在員夫人が"日本語教師養成講座"に通うワケ

新聞に頻繁に掲載される日本語学校の広告。日本人教師は常時募集している。

 間もなく開幕する上海万博上海万博や日本人社会の話など、たわいもない話をしていたのだが、ミサコさんがおもむろに言った。

「昨日から日本語教師養成講座に通い出したの」

「それまたどうして?」

「上海では遊んでばかりいたけれど、将来のことも考えようと思って」

 独身時代は専門職に就いていたが、結婚してしばらくして夫が中国駐在となり、十年以上働いていない。どういう心境の変化だろうか。夫の日本帰任が決まったのだろうか。

「ダンナはずっと上海にいるんじゃないかしら。でも、私たちはそろそろ帰国も考えようかと思って。もちろん子どもと2人で帰るのよ。高齢になった両親のことも心配だし・・・。あとは、子どもの教育のことを考えて、どのタイミングで帰るかということ。あまり早く帰りすぎてはせっかく身に付けさせた英語や中国語を忘れてしまうでしょう」

 ミサコさんは息子を日本人学校ではなく、英語と中国語のバイリンガルを育てる現地私立校に通わせている。期限のない中国駐在であり、せっかく中国にいるのだから子どもには中国語を身につけさせたいと入学させた。ところが、思いのほか英語の教育レベルも高く、満足しているのだと以前に聞いていた。

 日本ならば中学生で習うような文法を小学1、2年生で勉強するのだという。レベルの高さや進度の早さは英語だけではないようだ。小学生でも各教科でみっちり宿題が出される。

「日本のような"ゆとり教育"という名の"ぬるさ"はないのよ」

 教育熱心な彼女のことだから、息子は上海の高校を卒業させ、中国人のエリート学生のようにアメリカあたりの名門大学へ留学させるのではないか。そう思っていただけに、帰国という言葉は意外だった。

「2年くらい前かな、実家に帰った時にね、街を歩いていたら、水商売風の若い女性たちが中国語で会話していたの。その時にね、日本に働きに来ている中国人女性たちに日本語を教えるということも考えられるんじゃないかと思ったのよ。もちろん日常会話も教えるんだけど、お店でお客にこういう日本語を使ったらいいわよ、とか教えたらいいかと思っていたのね。
  ブランクが相当あるから今さら前の職業にも就けないだろうし、実家があるのは東京や大阪のような大都会じゃないから、仕事も限られるでしょう。中国語を使って日本語を教えられるんじゃないかと思ったのよ」

カラオケスナックの小姐たちの「日本語マニュアル」

 不況のご時世だ。夫の会社の倒産やリストラの可能性を妻たちは頭の片隅に入れている。

「帰国後に役に立てばとも思うし、上海でも働いておけば(就労歴の)ブランクも少なくなるし、アルバイト代も稼げるでしょう」

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