観る前に知っておきたい!
「スター・ウォーズ」が起こした映画史上の奇跡

中川 右介 プロフィール

そして、これまで同様にひとつの家族の物語でもある。

今回は、「子育てに失敗した」「元夫婦」の物語という点が現代的かもしれない。
そして、「悪の大物だった祖父に憧れ、ダークサイドへ転落していく孫」も出てきて、これってどこかの国の首相のことではないかと思いもした。

政治の隠喩では、帝国の残党が作ったという「ファースト・オーダー」という新組織(ほとんど帝国同様の巨大組織だ)は、ナチスのイメージそのものだ。そのネーミングも、ナチスの唱えた「新秩序」を連想させる。

タコダナ(高田馬場からのネーミングだそうだ)にある、ハン・ソロの古い友人が住む建物はツインタワーになっていて、それが攻撃されて崩壊するのは、9・11の映像イメージと重なる。

そして、「子供のころにさらわれて兵士として育てられる」という主要人物は、イスラム国の兵士を思い出してしまう。

レジスタンス軍も、帝国の残党のファースト・オーダーの軍も、どちらも最前線にも中枢にも女性が陣取るようになった。レジスタンスではレイアが「将軍」なのだ。

このように現実政治との重ね合わせも可能だ。逆に言えば、映画の中だけでなく、現実世界も戦争の只中にあるのだ。

今回の新しい「スター・ウォーズ」は最初から3部作が計画されているので、「フォースの覚醒」だけでは何も物語は完結していない。長編劇場用映画で堂々と、物語を完結させないで終わらせたのも、「スター・ウォーズ」の「帝国の逆襲」からだろう。確実にヒットし、確実に続編を作ることができるという自信の表れでもある。

というわけで、いろんな視点からも楽しめる。理屈は不要だ。理解しようとしてはいけない。フォースを感じるのだ。

ともかく――故郷へ帰ろう。

中川 右介(なかがわ ゆうすけ)
1960年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部文芸科卒業。2014年まで出版社アルファベータ代表取締役編集長。映画、歌舞伎、クラシック音楽、歌謡曲についての本を多数執筆。最新刊に『オリンピアと嘆きの天使 ヒトラーと映画女優たち』(毎日新聞出版)。その他の主な著書に、『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)、『カラヤンとフルトヴェングラー』『悪の出世学 ヒトラー、スターリン、毛沢東』(幻冬舎新書)、『山口百恵』『松田聖子と中森明菜』(朝日文庫)、『大林宣彦の体験的仕事論』(PHP新書)等