「不妊治療」は魔法の技術ではない!障害や命の危険…母子ともにリスクの高いお産の現実

「コウノドリ」の産科医が説く
鈴ノ木ユウ, 荻田和秀

もちろん、不妊治療でも「45歳以上はお断りします」「高齢出産はハイリスクです」「合併症の可能性があります」など、きちんとしたアナウンスをしているところが多いのですが、「リスク……うにゃうにゃうにゃ」と曖昧にお茶を濁して、治療を開始してしまう施設もあると思われます。

そして、どんな形であれ妊娠さえすれば、その医者は「神様」のように称えられます。そういう施設では、お礼の手紙が壁一面に貼ってあったりします。「おかげさまで妊娠できました!」と。でも、出産に至ったかどうか、無事に赤ちゃんが生まれたかどうかは誰にもわかりません……。

なので、僕は不妊治療が魔法の技術のように取り上げられるのは、ちょっと違うかなと思うのです。過去にも数多くの優秀な医者が、まるでダークフォースにからめとられるように、不妊治療専門の施設へ移っていった時期もありました。

本来なら、不妊治療と周産期医療も密接にかかわらないといけないのでしょう。受精卵着床・妊娠を目標とする不妊治療と、母子ともに健康な出産を目指す周産期医療は、手を取り合わないといけない。でも現状は、それらの指針をうまくコントロールできていないし、社会のコンセンサスもあやふやなままで、結局は個人に委ねられている状況なのです。

不妊治療の施設も今、飽和状態です。それだけではやっていけない時代がきて、今後は淘汰されていくと思われます。

僕個人の考えではありますが、不妊治療のクリニックや小規模な分娩施設がバラバラの方向で進んでいくのではなく、周産期チームを構成するという認識が、施設間をさまよう患者さんを減らすことにつながるはずです。おそらく世界の趨勢から考えても同じことです。これは事実として発信しないといかん、と思っています。