「不妊治療」は魔法の技術ではない!障害や命の危険…母子ともにリスクの高いお産の現実

「コウノドリ」の産科医が説く
鈴ノ木ユウ, 荻田和秀

産科医のぼやき、炎上覚悟!

かねてから、医療は「ポピュリズム」になってはいけないと僕は考えています。ポピュリズムというのは、一般大衆の感情や考え方、要求や願望を代弁する主義のこと。「患者さんのために」という錦の御旗を振りかざしている医者ほど、患者さんの人生を真剣に考えていなかったりするものです。「○○はするな!」という独善的な芸風(?)や、甘い言葉を売り物にして、熱狂的な信者(患者)を獲得している医者もたくさんいますが、僕は疑問を感じます。

「それで本当に患者さんは救われるのか?」

医療は残念ながら万能の魔法ではありません。必ず限界と例外があります。特に周産期医療がそうです。医療技術が飛躍的に発展しても、倫理が追いついていないという問題もあります。わかりやすい例で言えば、不妊治療です。

日本は不妊治療大国です。うちの施設でも不妊治療を経てお産に挑む妊婦さんは、全体の約18%にのぼります。ただ、現状では、「合併症があって、おなかの中で赤ちゃんを育てていけるかどうかわからない」人や、「年齢的に妊娠を継続できるかどうかわからない」人にも、不妊治療は行われています。

確かに、子供が欲しいと願っているのになかなかできない人、病気が理由で妊娠しづらい人にとっては、不妊治療は「救い」になります。不妊治療で授かって、元気な赤ちゃんを産んだ人もたくさんいますし、決して不妊治療そのものを批判するつもりはありません。実は僕も4年間ほど大学病院で合併症のある人の不妊治療に従事してましたから。

だからこそ言うのですが、超高齢や合併症をもった女性に体外受精を行って妊娠させると、どれだけリスクの高いお産になることか。赤ちゃんが育たない可能性、赤ちゃんが亡くなる可能性、母体が危険な状態になる可能性、いろいろなことを加味すれば、制限のない不妊治療が正しい医療のあり方だとは到底言えません。

産科医がこのような決断を迫らなければならないこともあります