「不妊治療」は魔法の技術ではない!障害や命の危険…母子ともにリスクの高いお産の現実

「コウノドリ」の産科医が説く
鈴ノ木ユウ, 荻田和秀

もっと究極を言えば、救命率が五分五分だった場合、時間と闘いながら、「この赤ちゃんはどうしたいと思うか?」と自問します。

芥川龍之介の「河童」という小説では、河童の世界が描かれているのですが、河童の赤ちゃんは、生まれるかどうかをお母さんのおなかの中で自分で決めるのです。「どうする?生まれる?」と聞かれて、河童の赤ちゃんが「いやあ、今回はやめとくわ」と答えるようなシーンがあります。それができれば産科医はどんなに気が楽か……。できないまでも、赤ちゃんの声なき声に耳を傾ける。その姿勢が重要だと僕は考えるのです。

そして、赤ちゃんの声なき声を、自分本位の吹き替えにしてはいけない。情で動いてはいけないし、神頼みで奇跡に頼ってもいけない。プロフェッショナルとしては、エビデンスを頼りに動くしかないのです。

他の科の医者に言わせれば、僕ら産科医は「あいつらアホちゃうか?」というくらいの騒ぎ方をしているそうです。でも赤ちゃんの心音が落ちたときは生きた心地がしません。一秒でも早く、と怒号飛び交うのは当たり前。時にはもたつく医者に頭突きをくらわせて、医者同士が軽い脳震盪を起こすような状態にもなるのです(僕が実際やりました)。そらもう必死です。だって赤ちゃんがSOSを出しているのですから。

たぶん、僕の本当のクライアントは、赤ちゃんなのだと思います。赤ちゃんからも「オッサン頼むで、ホンマ~」と言われているのかもしれません。