勝谷誠彦「騒乱のバンコク」リアルタイム日記

「弾が飛んだら行け!」
勝谷誠彦

 ここは説明を細かくしなくてはいけない。タイはいま「ソンクラーン」だ。タイの正月であり誰もが水をかけあっていい時だ。

 今年は太った自動小銃型の水鉄砲が流行っていて、誰もがそれで撃つ。

 一方で実包を構えた軍と民主勢力とが対峙しているのである。

 日本ならば危うい状況だろう。しかし、今夜の数時間で感じたのは「両方とも酔っている」であった。私も「撃たれ」ましたよ。水鉄砲で。一瞬のことであって、これが銃弾だったらと自分の不明を恥じた。

 その双方が酔っているのである。パトゥーナム周辺で。赤いシャツを来ている若者もいる。べったりと濡れた服から見える身体の線が見事なのは24時で終わった店から出てきたおね~ちゃんかもしれない。

 それらが渾然となってみんなで騒いでいるのだ。音楽も流れている。ちょっとした狂気と言っていい。

 ああ、これはタイの「ええじゃないか」ではないかと私は思ったのである。明日以降に書いていくが、タイはいまどういう統治体系を持つかという重要なテーマに接しているのだ。

 日本国であれば江戸から明治に難しいバトンタッチをするところだ。日本ではそこで「ええじゃないか」の狂気の中から「なんとなく」という正しい概念が生まれた。

 ソンクラーンの狂気の中で人々が語り合っていることを聞くき、と私はさやかにそう感じるのであった。

来ないと見えないもの

 まあ、しかし賑やかである。私は一発撃たれたが(笑)不機嫌な顔をしている外国人はそうは撃たない。こういう理由で来るのではなく、だれか大切な人と二人ならば、これはとことん濡れたい祭りなのだが。前回は仕事で、サイバラさんだからなあ。

 赤シャツの占拠地には巨大なテントがあってなるほど寝泊まりも自由なのだ。タイの山の方に行ったことがある私から見ると、はるかに上等な部屋でしかも都心ならば、みんなで語らって行ってみようかとはそれは思うよね。

 しかしその前で、赤シャツなどまったく着ていない男女が赤シャツ派が流す音楽で踊り狂っている。

 これは別の現象かと言えばさきほど言ったように、革命とはこういうところかから起きるのである。ソンクラーンとはいえこの雰囲気を私は危ないと見た。

 赤シャツは明日、スクンビットの31番地あたり、それからシーロムという、これは経済と観光の中心まで、進出すると言っている。そうした空気を伝えていきましょうか。

 来ないと見えないものというのは本当に多い。私もいま、猛烈な反省の下にいる。まだタイに来て数時間だが、見えているものは日本のそれよりも数倍だ。

以降 vol.2 へ。

この連載はコラムニスト勝谷誠彦のメール『勝谷誠彦の××な日々。』より一部を抜粋して転載したものです。メールの購読はこちらで行えます。