研究者としてやっていくのに必要な「研究以外」のノウハウとは?

ボスは、あなたの何を評価しているのか
長谷川 修司

 また、外国の研究者と付き合うには、自分の国の歴史や自然、食べ物、教育システム、政治のことなどを普通に話せる必要があります(英語力のことを言っているのではありません)。

 ちなみに、今、国際会議のためにポーランドに滞在してこの原稿を書いているのですが、「中国や韓国との間にあるsmall islands は今どうなっているんだ? こっちでは最近報道がないんだよ」とポーランドの研究者に食事時に聞かれました。

 このような「研究以外」の常識的なことが(一般の社会人と同じように)研究者にとっても非常に重要です。

 なのに、研究者を目指す学生たちには意外とその認識がないことを、長年学生たちと接してきて感じています。研究者といえども社会のルールを守る「良き市民」でなければなりません。常識を欠き、「良き市民」から逸脱した研究者ほど、研究不正やアカデミックハラスメント、パワーハラスメントなどの問題行動に手を染めがちではないでしょうか。

 ですので、研究者になり、うまくやっていくために必要な「研究以外」のノウハウやスキル、お作法を伝授したいと思い、本書を書き始めました。「うまくやっていく」とは、たとえば、

・自分が所属する研究グループの中で先輩や後輩とうまくやっていく
・学会などの研究者コミュニティの中でそれなりの存在感を示しながらうまくやっていく
・研究成果を専門知識のない一般市民や中高生に発信して信頼を得る
・後進を指導しながらうまく育てていく

などです。それぞれの場面や立場でうまくやっていくには、ある種のノウハウが必要です。

 研究は独力で進展するものではありません。実験研究や製品の開発研究では共同研究者たちと一緒に研究したり、チームを作ってシステマティックに進めたりします。ひとり黙々と頭の中で考える理論研究でさえ、他の研究者と多面的な議論をすることは研究を深化させるのに役立ちます。理論家と実験家のコラボがとても重要で、その成果の論文が高く評価されます。

 どんな種類の研究でも、指導者、助言者、先輩、同僚、共同研究者、後輩、部下、学生、ときには競争相手などとの付き合いは不可欠です。その良否が研究の成否を決めると言っても過言ではありません。

 また、研究費を獲得するには、専門の違う審査員にアピールするような申請書を書いたりプレゼンしたりする必要があります。研究者に限らず他の職業でも一般に言われているように、大雑把に言えば「コミュニケーション力」と「プレゼンテーション力」という言葉で括られるスキルが、研究そのもののスキル以外に、大変重要です。