たった5分で泣く子続出の絵本『ママがおばけになっちゃった』

母の死を通じて「心」を伝えたい
のぶみ

つらさを体験できることの大切さ

―「感動した」という声をいただく反面、「子どものトラウマになるのが不安」というような感想もいただいています。

逆に、子どものトラウマになったほうがいいと思います。それに、トラウマになるかどうかは、子ども自身が決めることで、大人が決めることじゃないんです。

子どもは母親がいなくなるなんて、想像しないし、したくない。当たり前の存在だと思っているんです。そうすると、ワガママを言って暴れたり、ときには母親を蹴ったり叩いたりする子もいます。でも、それはいかんぞ、と。

この絵本は、下書きの段階で、出会った人や講演会に来た人になんども読み聞かせてから完成しました。1000人くらいの人に読んでいるんです。それで気づいたのですが、子どもは読んでいる途中で「嫌だ! やめろ!」といって泣いたり、「もう二度と読むな!」って逃げ出したりするんです。だけど、こう反応するのは母親が大好きだからなんですね。

そこで「お前、ママがいなくなったらどうするんだ?」と問いかけます。とても嫌なことだけど、想像させることが、すごく大事。そうすることで子どもが、母親のことを大切にしなくちゃいけない、と気づくことができると思います。それに、人はいつか必ず死んでしまう。つらい思いを絵本のなかで発散しておくのも僕は大事だと思います。

―作品に登場する母親が、料理もてきとうで、あまり完璧ではないところも共感を得ているようですね。

『ママがおばけになっちゃった!』に出てくるママはちょっとぽっちゃりしているし、部屋も散らかっています。読んだ人は、「うちの家庭もそうだ!」って安心するのかもしれません。うちの奥さんも、料理や掃除が苦手なんですよ。今日は取材があるからきれいに掃除してくれましたけど。

最近は、コンビニのお弁当も美味しいから、食事をそれで済ませることもあります。それは家事をきちんとしている家庭からすると、批判を受けることかもしれない。でも、その代わり、子どもと一緒にいる時間が長くて、一緒に遊んであげたり、愛情を傾けて、たっぷり与えて育てています。

適度に「いいかげん」だから、子どもがのびのびと育つことができているように感じるんです。それはうちだけではなくて、他の家庭を見ていてもそう思います。子育てってそんなに「完璧に」しなくても大丈夫だって分かってきたんじゃないでしょうか。

作品に込めた思い

いまは、働いている母親も多くて、自身にも家庭の外でやりたいことがあるから、家でもやることがいっぱいだと、てんてこ舞いになる。だから部屋も散らかってしまう。それは仕方がないし、それでいいと思うんです。

子育ては親と子の格闘技みたいですよね。母親はほんとうに大変です。毎日過ごしていると、つい怒りたくなくても子どもを怒ってしまったり、イライラしてしまったりする。だけどこの絵本を読むと、改めてハッとすることがあるんでしょう。

物語は、母親が交通事故に遭い、“おばけ”になって4歳の息子のもとに現れるところから始まります。母親と息子かんたろうの家庭がユーモラスに描かれ、思わず笑ってしまう場面も。後半、「かんたろう、ありがとうね。かんたろうのママで、ママはしあわせでした」と、これから一人で生きていかなければならない息子を励ましながら語りかける言葉に、共感し涙を流す読者が続出。かんたろうも、ママの死を少しずつ受け入れ、自立していきます。