産科医療が危ない!深刻な医師不足、過酷な勤務…それでも僕が産科医を続ける理由

鈴ノ木ユウ, 荻田和秀

そんな周産期医療の現実もあり、産科は依然過酷な職場であることは間違いありません。それなのに、なぜ産科医を続けているのか。一般的には「産科医=ドM」と言われることも多いのですが(笑)、いやいや、違うのです。

「お産に立ち会う喜び」というのは、いわば麻薬のようなものです。ドラマチックでダイナミックな現場にいて、言葉ではたとえようのない喜びがあります。オキシトシンも出ているのではないかと思っていますし。だから産科医はやめられない。

それに、入院してきて、「おめでとう」と言えるのは産科医だけ。他の科であれば、基本的には患者さんに「お大事に」か「ご愁傷様」と言わなければいけない。でも、産科に来るのは患者さんではなく妊婦さんです。どんな妊娠でも「おめでとう」なのです。

血の通ったプロでありたい

「産科医になってよかったと思いますか?」と聞かれることがあります。迷わず「はい」と答える自分がいます。一日に何回も「しんどいなぁ……」と思うことがありますが、それを上回る数の「よかったなぁ」があるから。だから今でも続けられています。

たとえば、妊婦健診に一緒についてきたダンナさんに、思いっきり蹴られたことがありました。虫の居所が悪かったのか、途中からお怒りになられて、キレられまして。超音波診断にイチャモンつけられて、蹴られたのです。これはしんどいでしょ?

僕にとっていちばんしんどいのは、母体死亡、妊婦さんが亡くなることです。もちろん赤ちゃんが亡くなるのもしんどいですが、元気だったはずのお母さんが亡くなるのは、本当にしんどい。僕自身、今までに母体死亡例を3件、経験しています。以前は、夜中にその夢を見て、汗びっしょりで目覚めるのを繰り返していました。