流行語大賞はもう限界!? 「本当の流行」はグーグルが教えてくれる

今年の検索語No.1はあの言葉
森田 浩之 プロフィール

データやテクノロジーが正確な流行語を決める

アメリカには「WOTY(Word of the Year=今年の言葉)」を発表している有名な団体がいくつもある。最も古いものは1991年にAmerican Dialect Society(ADS)という団体が設けた賞だ(ちなみに日本の「新語・流行語大賞」はこれより古く、1984年に始まっている)。

American Dialect Societyを直訳すると「アメリカ方言学会」だが、Dialectは「北アメリカの英語」というニュアンスのようなので、「アメリカ英語学会」くらいが正しい訳かもしれない。

そのADSが2015年の「WOTY」を発表するのは年明けだが、参考までに昨年の大賞は「#BlackLivesMatter(黒人の命には意味がある)」 というソーシャルメディア上のハッシュタグだった。投票権を持つのは学会のメンバーで、その多くが言語学者である。

ADSは「1990年代の言葉」に「web」を選び、「20世紀の言葉」には「jazz」を選び、「過去100年の言葉」には「she」を選んでいる。センスがいいというか何というか、である。

#BlackLivesMatter 〔PHOTO〕gettyimages

もうひとつアメリカの「WOTY」で注目したのは、グローバル・ランゲージ・モニター(GLM)という団体が膨大なデータをもとに選んでいる言葉だ。GLMでは、地球上に18億3000万人以上いる英語を話す人たちが、世界でトップの30万件の活字・電子メディア、ソーシャルメディアで書いている言葉を、「ナラティブ・トラッカー」(直訳すると「言説追跡」)というテクノロジーを用いて分析している。

2015年の大賞の発表は今月28日だが、現時点で公表されている1位は「Beast Mode」という言葉だ。これはアメリカンフットボールの最高峰NFLのシアトル・シーホークスに所属するランニングバック、マーショーン・リンチのとんでもなくアグレッシブなプレイスタイルを指す言葉らしい。動と静の方向性は正反対だが、日本の「新語・流行語大賞」のトップテンにも入った「五郎丸(ポーズ)」が1位になっているようなものかもしれない。

イギリスを代表する「WOTY」は、あのオックスフォード英語辞典が発表している。オックスフォード辞典といえば、ここに加えられた新語は英語として認められたという扱いでニュースになる存在だ。たとえば「karaoke」がオックスフォード英語辞典に加えられました、とか。

そんな権威中の権威は、すでに2015年の「今年の言葉」を発表している。ただし、今年の大賞に輝いたのは「言葉」ではない。「うれし涙の絵文字」だ(「emoji」はすでに英語になっている)。

〔PHOTO〕iStock

オックスフォード英語辞典が「Swiftkey(スウィフトキー)」というテクノロジーを使って世界で使われている人気の絵文字を調べたところ、今年使われた絵文字のなかでこの「うれし涙」はイギリスでは20%、アメリカでは17%を占めたという。絵文字のなかでも「うれし涙」の使用頻度は格段に増えているのだ。2015年の空気を最もよく反映している「言葉」として評価したと、オックスフォード英語辞典は記している。

アメリカとイギリスの「新語・流行語大賞」を見てみると、突っ込みどころがないことに気付く。何しろ相手はビッグデータだったり、絵文字の使用頻度を瞬時に測っているテクノロジーだったりする。日本の「新語・流行語大賞」を決めているような生身の人間ではない。ここに突っ込みを入れるのは、スーパーコンピューターを相手にチェスで戦いを挑むようなものだ。

日本の流行語ランキングでも、グーグルが検索語をもとに発表した今年の大賞は「マイナンバー」だった。こちらも「そうですよね」と納得するしかない。