ガン治療の名医100人【部位別完全リスト】~この人でダメなら仕方ない

「神」に抗ってくれる男たち
週刊現代 プロフィール

自分のために「神」に抗ってくれる男――患者にしてみれば、これ以上信頼できる医師はいない。患者が頼るのは彼の「メス」だけではなく、ひたむきに医と向き合う、その「為人」なのだ。

「医は仁術なり。仁愛の心を本とし、人を救うを以て志とすべし」

江戸時代の本草学者・儒学者である貝原益軒は『養生訓』にこう記した。同書が著されて300年余りを経て、医療技術の進歩は目覚ましいものがあるが、仁術としての医の本質は変わらない。

大河ドラマ『宮本武蔵』などに出演した俳優の中康次氏は、'12年、直腸と肝臓のがんで余命半年と宣言された。だが当時かかっていた医師の説明が十分だとは思えず、他の医師を探さざるをえなかった。そんな状況で知り合いに紹介されたのが、北里大学東病院(当時)の佐藤武郎氏だった。

「まずなにより説明が明確でした。何を聞いても、嘘やおべんちゃらはなく、なるほどと思う答えが返ってくる。人柄も陽気で、接していて信頼できたので、『佐藤先生でダメだったらあきらめよう』とまで思いました」

中氏は佐藤氏の指示のもと抗がん剤治療を続け、「余命半年」の宣告を受けてから4年目の冬を迎えようとしている。

信頼できる医師の条件で最も大切なこと。それは患者と「対話する力」だ。複雑な病状と難しい治療法を患者に納得のいく形で説明できるか。それが「この医師となら、難しい病気とも戦える」という患者の信頼感を得る第一歩だ。

がん研有明病院の消化器外科部長、比企直樹氏は最新技術で手術を行う凄腕の医師だが、患者との対話にはとりわけ気を配るという。

「患者さんはどなたも大きな不安を抱えておられます。最初に来たときに、私はまず結論からお話しすることにしています。

いい結論なら、なるべく早く。悪い結論であれば、心を開いてくれるまで話してから告げる。いずれにしても、できるだけ患者さんが大きな望みをもって治療にあたれるようにします。生きる望みを失った瞬間に人は元気を失う。科学的にも『病は気から』が基本なのです」(比企氏)

比企氏による手術で胃の3分の2を摘出した元ユニクロ副社長の澤田貴司氏が語る。

「先生の説明は簡潔明瞭なもので、その言葉に安心して手術を受けることができました。術後の経過も先生の説明通りになり、今ではお酒も飲めますし、トライアスロンだってできます。先生には、信頼と感謝の気持ちしかありません」

自分の利益は考えない

自身も中咽頭がんを患った医師の中原英臣氏は、「医者であっても、がんになってしまえば、まな板の鯉と同じだ」という。

「私の場合も不安で一杯でした。しかし、診てもらった浅井昌大先生(鎌ケ谷総合病院)や松本文彦先生(がん研究センター中央病院)は、こちらの不安な心を和ませながら懇切丁寧な説明をしてくれました。大橋巨泉さんを診ていらっしゃる伊藤芳紀先生(がん研究センター中央病院)とはいつもプロ野球の話題で盛り上がりますが、先生がご自身の治療の腕に確たる自信を持たれているので、安心してお任せできます」