五郎丸らW杯メンバーが厳選!
〜2019年日本大会に向けて覚えておきたい「最高のラガーマン10人」

1位はあの万能選手
週刊現代 プロフィール

つらい時こそ、自分が走る

五郎丸が副将として支えた、主将のFLリーチマイケルの名前をあげたのは、SH田中史朗(30歳)だった。

「僕は『チームのためになる』と判断したことはストレートに言って、チームメートと喧嘩になることもあった。そんなとき、チームがまた一つになれるよう、リーチが声をかけてくれました。

『フミがチームのことを思ってやってくれているのはわかるから』と言ってくれたのは、本当にありがたかった」

田中は、土壇場で力を発揮するリーチのエピソードを披露した。

「昨年、僕がスーパーラグビー(ニュージーランド・ハイランダーズ)でプレーしていた時期に、彼は遊びにきてくれた。彼の母国ですからね。

あるとき出先で、何かの手違いで車のトランクの中にキーを入れたまま、閉めてしまった。普通なら途方にくれますが、彼は、そばにいた人から工具を借りて車を一部分解し、後部座席の下からトランクに手を伸ばしてキーの入ったカバンを取りだした。たくましいですよね」

歴史的金星となったW杯初戦の南アフリカ戦。3点差を追い、ラストワンプレーで得た相手反則で、エディ・ジョーンズ監督の「PGを蹴って、同点にしろ」という指示をさえぎり、リーチはスクラムを選択。トライに結びつけたのは、今や語り草だ。トライにつながる最後のワンプレーで、リーチは3度もボールを持って走った。南アの屈強なFWと80分間対峙すれば、体力を消耗し、ボールを持って走る余力は残っていないはず。リーチが振り返る。

「僕がスクラムを選んだので、ほかの人でトライをとれなければ、自分がとるつもりでした。主将は、他の人が一番つらい時に走らないといけない」

そのリーチが一目置くのが、東芝の10年先輩にあたるLO大野均(37歳)だ。リーチが明かす。

「キンちゃんは、何でも素直に受け入れてくれる。たとえば、代表で色々な国に遠征すると、食事がおいしくないところもある。『まずい』と訴える選手もいますが、キンちゃんから文句を聞いたことがない。それはどんなにキツい練習でも、ベストを尽くす姿勢にも通じています」

大野は歴代最多の代表戦96試合に出場した、レジェンド。大半の一流選手は遅くても高校までに楕円球に触れるが、大野は大学からだ。しかも東北地区大学リーグの日大工学部。大学ラグビー界では無名だ。大学4年の春、国体の福島選抜に選ばれ、当時のFWコーチが、東芝の薫田真広監督(当時)と同期だった縁で、東芝の練習に1度だけ参加。そこで大野は「内定」をたぐりよせた。HOとして日本代表戦に44試合に出場した薫田氏は、こう明かしている。