各界の一流が明かす「苦しみから抜け出す方法」
~現役引退、身近な人の死。そのとき、彼らはどう振る舞ったか

週刊現代 プロフィール

残された私の役目は、それを受け継いでいくこと。幸いにも、真吾の4人の子供も、この森を愛してくれている。彼らのために、私にはまだやることがたくさんあります。私はこの八ヶ岳の森で、今後の人生を精一杯歩んでいくつもりです」

人真似はしなくてもいい

追いかければ追いかけるほど苦しくなるのは、創作の世界も同じだ。

直木賞作家の桜木紫乃氏が言う。

「私が追いかけているのは、やはり物語です。私にとって、物語というのは『すでにそこにあるもの』。恐竜の化石のようにすでに埋まっているんですが、掘る人、掘り方によって形が変わっていく。1頭の恐竜を掘っているなら、それだけを掘ればいいのに、違う恐竜を掘り始めてしまったり、せっかく出てきた骨がどこの骨かわからなくなってしまったり……。

物語を書くのは、本当に難しい。でも、追いかける以外に方法はありません。作家にとっての『追いかけるな』とは、『書くと決めたらその物語だけに集中しろ』ということなのかもしれません。

伊集院さんの『追いかけるな』というメッセージは、追いかけている人への励ましだと私は思っています。追いかけて、追いかけて、苦しんでいる人に、『必要以上に追いかけなくていいんだぞ』と語りかけてくれている。決して『追いかけない』ことを奨励しているのではないんです。だから、何かを追いかけてきた人はみんな、共感するんでしょう」

追いかけることは悪いことではない。ただふと立ち止まったときに、気づくこともある。

女優の音無美紀子氏にとってそのきっかけとなったのは、'88年に患った乳がんだった。

「当時、私は30代。順風満帆な人生を送っているなかでの病気でした。仕事をしながら父母会の役員を引き受けるなど、私は『できない』と認めるのが絶対に嫌な性格。病気になったあとも泣き言を言わず、心配されても、『何ともない。大丈夫』と言い張っていた」

だが、気丈に振る舞えば振る舞うほど、反比例するように、「この身体で女優業が続けられるのか」という不安は膨らんでいった。

離れていく理想に何とか近づこうとする日々に苦悩し、音無氏はうつ病に。救ってくれたのは、家族だった。

「『たとえ世の中に認められなくても、僕と子供たちにとって君は必要なんだ』という、夫の励まし。そして、『ママすごい』という何気ない娘の一言が、気づかせてくれたんです。『こんなダメな私でも、認めてくれる人がいるんだ』と。今まで『人のため』と思ってかっこ良く生きようとしてきたけど、まずは自分がしっかりと生きないと、人の役になんて立てないんだと知りました。