小説家・朝井リョウさんインタビュー
〜新作『世にも奇妙な君物語』のキーワードは「イライラ」

能力を低く見られがちな脇役俳優たち

―幼稚園教諭・金山孝次郎が保護者からのクレームに向き合い奮闘する第3話「立て! 金次郎」、ネットニュースの編集者・本田香織が主役の第4話「13・5文字しか集中して読めな」。クレームやネットニュースといったテーマは、どうやって選んでいるのですか。

大切にしているのが、「人が何にイライラしているか」という点です。

喜びとか幸せって、掘っても一層だったりしますが、イライラは掘っていくと、けっこう深い所に行きつくんです。たった一点のイライラを書いていたら、いつの間にか社会全体の話になっていたりとか。そういう可能性が高いのは、喜怒哀楽のうち、とくに「怒」なのかなと思います。

―本書は、「脇役バトルロワイアル」でラストを迎えます。ドラマの脇役しか回ってこなくなった青年俳優・溝淵淳平が、名脇役揃いの役者たちと、一風変わったオーディションに臨む物語です。

主演を演じるような役者さんって、ミステリアスな雰囲気を大切にしますが、それは周りに作られた部分が大きい。

一方で、脇役俳優と呼ばれる方はサービス精神がいっぱいあって、番宣もそつなくこなす。だけどそういう能力は役者としては浅く見られる傾向にある。そんな風潮に、やはりイライラみたいなものを抱いていました。

―ドラマと同様「仕掛け」がどの作品にもありますが、それに毎回ハラハラさせられ続けた読者は第5話の「小説ならではの仕掛け」にさらに驚くことになりますね。

今作では、これまでの作品よりいっそう、骨組みをしっかりさせ、起承転結、とくにオチを意識しています。読者の方を脅かしたいという思いが常々あって……脅かされる読者の顔を見るのが好きなんです(笑)。

主人公のモデルにした溝端淳平さんに実際にこの物語をプレゼンしたところ、とても喜んでくれたんですよ。いつかドラマ化を実現したいですね。

―今後は、どういう作品を手掛けていきたいと思いますか。

佐藤多佳子さんの『一瞬の風になれ』のような、スポーツ小説を書きたいと考えています。

自分も高校まで部活でやっていたバレーボールをテーマに、最低でも上・中・下巻で、10年くらいのスパンを描いた物語を書きたいんです。時間の流れがきちんとあって、主人公の成長に伴い周囲の人々も変わっていく。それを丁寧に書きたいですね。

(取材・文/安部次郎)

あさい・りょう/'89年岐阜県生まれ。'09年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。'13年『何者』で直木賞を受賞、'14年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞受賞。他著に『スペードの3』『武道館』など

世にも奇妙な君物語
講談社/1400円

いくら流行っているからといって、経済的にも精神的にも自立した大人が、なぜ一緒に住むのか(第1話「シェアハウさない」)。その人がどれだけ「リア充」であるかを評価する、「コミュニケーション能力促進法」が施行された世界。知子のもとに、一枚の葉書が届く(第2話「リア充裁判」)。親のクレームにより、幼稚園内で、立っている金次郎像が座っているものに変えられた!(第3話「立て!金次郎」)。…そしてすべての謎は、第5話「脇役バトルロワイアル」に集約される。

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『週刊現代』2015年12月12日号より