最近、中国政治・経済が急速におかしくなってきた。
本コラムでも以下のようにテーマ、視点を分けて、中国の政治・経済問題を取り上げてきた。
○急ぎすぎた覇権(中国は見事に「中進国の罠」にハマった! 急ぎすぎた覇権国家化のツケ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46183)
○経済成長率の低下(衝撃!中国経済はすでに「マイナス成長」に入っている?データが語る「第二のリーマン・ショック」 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46183)
○無理なAIIB(アジアインフラ投資銀行)構想(日米が参加しないAIIBの致命的欠陥。中国は必ず日本に水面下で参加を求めてくる http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42865)
その中国で、珍しく国民の気持ちが高まるような出来事が起こった。国際通貨基金(IMF)が11月30日の理事会で、中国人民元をSDR(IMFの特別引き出し権)の構成通貨に採用することを正式に決めたのだ。これは、中国という国のメンツをくすぐる出来事だ。
SDRとは、IMF加盟国の準備資産を補完する手段として1969年に創設した国際準備資産である。ただし、SDRは通貨ではなく、またIMFに対する請求権でもない。
むしろSDRは、IMF加盟国の「自由利用可能通貨」に対する潜在的な請求権であり、SDRの保有者は、保有するSDRと引き換えに、「自由利用可能通貨」を入手することができる。その際、SDRの価値を決める通貨バスケットは「自由利用可能通貨」から構成される。
従来「自由利用可能通貨」として、IMFはドル、ユーロ、円、ポンドを指定していたが、それらに人民元を加えたのだ。これをもって、人民元も国際通貨の仲間入りと囃し立てる人もいる。
一般論として、IMFが人民元をドルや日本円と並ぶ世界の主要な通貨として採用するとしたことで、加盟国との間の資金のやり取りなどに人民元が活用していくといわれている。通貨の世界でも中国の存在感が高まったというわけだ。
これによって、中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)での取引の自由化も加速すると予想され、世界の金融界での中国の存在感がますます高まる、という見方がある。