なぜセブ島・スラム街の住人は、死者を笑顔で送り出せるのか
~丸山ゴンザレスの「クレイジージャーニー裏日記」④

丸山 ゴンザレス プロフィール

というのも墓場のスラムというものは、珍しいスタイルではあるが他の国や地域で皆無というわけではない。むしろ東南アジアやアフリカに限っていえば、探したら見つかる、ぐらいのレア度であるらしい。

ただし、フィリピンの場合その規模が他の地域に比べて著しく大きいのだ。首都のマニラには、約3000人が暮らしている墓場のスラムがあるが、それは墓の敷地内に小屋を建てて暮らしているからこそ可能な数字である。

一方、セブ島の墓場のスラムの場合は、居住形態が実に珍しいのだ。特に居住スペースとして家屋を建てているのではなく、小屋のように建てられた墓場にそのまま住んでいるという特色がある。

住民に聞いてみた

私は霊園内を歩いてみることにした。実際に自分の足でまわってみると、かなり大きな墓地であること、そして多くの墓に人が住んでいることがわかった。こうなると、疑問を解消するために住人たちに直接聞いてみたいことが出てくる。棺が複数並んだひときわ大きな墓に暮らしている夫婦にインタビューをしてみることにした。

-お二人はここで暮らしているのですか?
「そうだよ。ずっとここに住んでいる」

-どうしてここに住んでいるんですか?
「ここは、仕事があるからね。墓の管理なんかをしているんだよ」

-墓の管理って、お墓の持ち主に頼まれてやっているんですか?
「ここに住むのを許してもらうかわりに、墓のオーナーが来ない時には掃除したり、外壁を修理したりしているんだ。許可がないと警察に通報されちゃうから、ほかの連中もそれぞれ墓のオーナーと契約している」

-つまり、ここに住んでいる人たちは、墓守として雇われているということなんですね。
「そうさ。他の連中は墓参りに来た人にロウソクとか花を売ったりもしている」

-ここでの暮らしはどうなんですか?
「快適……とは言わないが、まあ生活はしていけるね」

公的な許可ではなく、オーナーとの私的な契約に基づいているといことはわかった。とはいえ日本人的な感覚からすると、どうしても理解できない部分もある。死者と共に暮らすということで、怪談めいた恐怖というか、霊的な怖さのようなものがあるだろう。

だが、フィリピンの国民性というのだろうか、どうやら我々とは死生観が大きく違うようなのだ。