「長野の小さな食堂」が7000万円脱税〜真面目と評判の夫婦がなぜ?

週刊現代 プロフィール

「子や孫の名義で預金する、いわゆる『名義預金』は古典的な節税方法ですが、今は通用しません。たとえば、子供が生まれたときにその子の名義で銀行口座を作ります。贈与税のかからない範囲で毎年110万円ずつ貯金したとして、成人すると2200万円。このおカネは子供名義だから、親が死んでも遺産として申告する必要がないと考えがちですが、そうではありません。通帳の管理を親がしていて、贈与の実態がなければ、親の財産です。それは相続税の申告対象になるというのが、当局の判断なんです」

水原家の場合、夫妻やその子供の名義で2億5000万円もの預貯金があり、それを申告しなかった容疑で、今回起訴されたわけだ。どうやってそこまでの金額を貯めることができたのか。水原家の知人はこう推測する。

「いくら稼いでも、稼いだおカネを使う暇がありません。飲食店は毎日のように店を開けなければならないから、旅行にも行けない。おばあさんが宝石好きだなんて、聞いたこともないし、株も土地も持っていない。

だから、利率のいい時代に生命保険や定期預金をいくつも持っていたという話に地元ではなっています。おじいさんが亡くなって、しばらく経ってから会ったときに、夫の満期になった保険に手を付けていないと話していましたし、保険料の支払いが大変だとも言っていました。夫の保険金や自分の年金保険などで手にした現金を、子供や孫の口座に移し替えていたのではないでしょうか」

なぜバレたのか

税務署は資産家たちの資金の流れを絶えず洗っている。今回のケースでは母親が亡くなってから8ヵ月後に夫妻が相続税を申告し、その時から調査が始まった。

「まずは税務署が遺産を調べます。税務署はある程度、土地に根付いて調査をしていますので、亡くなった人が商売をしていた場合、このくらいの資産があるだろうと目星がつきます。それと照らし合わせて、申告された額が少なければ、本腰を入れて調査する。

今回のケースは名義預金ですが、実は税務署はある程度、預金口座を把握しているんです。日常的に金融機関を調査していますが、怪しい口座があれば、その情報をストックしていますからね」(元国税査察官)

たとえば、こんな具合だ。税務署が別の「水原」姓の人物が関係する会社の税務調査を行っていたとする。税務署は金融機関にその人物の口座照会をかけるが、金融機関やマスコミにどこの誰を調べているかバレないよう、同姓で無関係の人の口座なども合わせて問い合わせるという。

その際、多額の現金があり、動きがないような怪しい口座を発見すれば、その情報をストックしていくのだ。元国税査察官が続ける。

「名義預金を発見したとき、すでに贈与の発生から5年以上が経っていたとします。租税の時効は5年ですから(悪質な場合は7年)、通常調査では持ち主に対して何もできません。こういう場合は、親が死ぬのを待って、相続のときにガバッと課税するわけです」