プロ顔負け!「イスラム国」驚異のコンテンツ制作能力
~10ヵ国語で発信、“情報聖戦”の実態に迫る

小林 恭子 プロフィール

スマホにISからプッシュ通知が届く

ISのチャンネルからは「毎日、大量の情報が発信されている」。このサービス開始で、ジハド運動ウォッチャーの仕事が「大きく変わった」とアルラミ氏はいう。それまではツイッター、チャット、フィードなどさまざまな情報源を確認する必要があったが、チャンネルに登録していれば、ISの新着情報が自動的に通知されるからだ。

11月13日、パリで同時多発テロが発生し、ISが犯行声明を出した。ロンドンの自宅にいたアルラミ氏は、自分の携帯電話の通知音で声明文の存在を知った。10月のエジプト・シナイ半島で起きたロシア旅客機の墜落事件の犯行声明を知ったのも、テレグラムのプッシュ通知だった。

かつて、自宅でジハド情報を収集する際に、暗号化されたサイトを訪問しないように気を付けていたという。「自分自身が当局の捜査の対象になる可能性があるからだ」。

しかし今は「情報はソーシャルメディア上にある」。ツイッターやテレグラムのチャンネルを「眺めるだけで、ISのプロパガンダが入ってくる」。

アルラミ氏は取得した情報がどんな意味を持つのかを文章にまとめ、BBC内でこの情報を知るべき記者や編集者に一斉送信する。

同氏は最後に、ISのもう1つのメディア戦略として「大量の情報を出すことで、ほかの情報を見えなくする」やり方を挙げた。「事件が持ち上がると、2日ほどで関連の動画を10本作り、公開する。ISの支持者たちがハッシュタグをつけ、関連の記事や支持の声を入れながら情報を拡散してゆく」。主張に同意しない声があっても、「かき消されてしまう」。

11月18日、テレグラムでISが使っていたサイトが閉鎖された。「でも、また別の形に戻ってくるだろうと思う」。

DENの会合がパリ同時テロから数日後の開催となったこともあって、参加者はアルミラ氏が紹介したISのメディア戦略にやや圧倒されたように見えた。同氏が「ISからプッシュ通知を受ける」と聞いただけで、ISの存在やテロの模様がぐっと身近に感じられたせいもあっただろう――もちろん、そんなことでびくびくしてはいられないのだろうが。

BBCニュースを見ていると、事件が発生してすぐに政治記者やセキュリティ担当記者がレポートする。確信をもって話ができるのは、アルラミ氏など情報を収集する専門家のチームがいるからであることを、筆者は改めて知った。

また、オープンな場所に堂々と情報がある――。これこそが、ISの支持拡大の秘密の1つだろう。