「母はわたしを愛さなかった」
その事実を受け入れ過去を手放した、ある女の告白Ⅲ

あれはしつけではなく「虐待」だった…

わたしと母との新しい関係

父は数年前に亡くなった。今は実家で1人暮らしをする母のために、兄と妹が年に何度か、交替で実家に帰っている。わたしは、現在もまだ母と距離を保ったままだ。

わたしと母とは心が通い合わなかったし、今後も通い合うことはないだろう。母がありのままのわたしを愛することはないだろうし、わたしが母を愛することもないだろう。

母を赦したわけではない。だが、激情に捕われた時期はもはや過ぎたのだ。

わたしは、解放されたのだと思う。

それは、母という人間の成りたちを少しは理解したからかもしれない。

母があのようにふるまい、娘を虐待した理由の一端を知ったからかもしれない。

母と心理的に分離できたせいもあるはずだ。そしてそのおかげで、わたしは失われた自分自身を少しずつ取り戻していったのである。

奇しくも、自分を知るということは、母を知るということでもあった。

今は静かな気持ちでこう思うのだ──「母はわたしを愛さなかった」。それは、わたしの人生のひとつの事実であり、わたしはその過去を手放すのだ、と。

今度、母に会った時には、もう母に呑み込まれることもなく、本当の自分自身でいられるような気がする。

わたしは今、来年春の父の七回忌に実家に帰ろうかと思っている。

おわり。