この国からマンション偽装がなくならない理由~「姉歯事件」から10年。ヒューザー元社長が国交省の「大罪」を告発する!

藤岡 雅 プロフィール

私だって、泣きたかった

耐震偽装事件は、設計段階での偽装でした。これは、構造計算書を見れば欠陥はすぐに見抜けます。しかし今回の三井不動産レジデンシャルのマンション傾斜問題は、施工段階での偽装です。これが横行していたならば、誰もその欠陥には気付けません。耐震偽装事件以上に深刻な問題です。

旭化成建材のデータの改ざんや不正は11月24日時点で360件にのぼり、常態化していたことが伺えます。施工主の三井住友建設、そして旭化成建材が引き起こした問題は、最終的には建築主の三井不動産レジデンシャルが負わなければならない「瑕疵担保責任」に相当するものです。三井不動産レジデンシャルは、この責任を免れることはできません。

しかし、問題のポイントを見誤ってはいけません。

三井不動産レジデンシャルは、故意に欠陥マンションを作ろうとしていたわけではありません。旭化成建材もしかり。バレたら多大な損失の出るような自殺行為を、そもそも会社組織はやらないものです。

「建築現場でデータ改竄をされてしまえば、建築確認でチェックのしようがない」
といった行政マンの言い訳も聞こえてきますが、問題はそうではないのです。「建築確認」の名に値しない、なんら実効性の伴わない建築確認が横行していることのほうが問題なのです。

マンションが完成する前に販売してしまうため、施工期間が定められていたり、利益率の薄いマンションの建設ではコストに対してシビアな圧力がかかったりと、今のマンション建設の仕組みに問題がないとは言いません。

建築主や施工主の経営者としての責任が問われるのは当然ですが、「組織が悪意を持ってやった」というレッテル貼りは、この機会に打つべき政策判断を誤った方向に導いてしまいます。

旭化成の浅野敏雄社長が、記者会見で涙を流して謝罪していましたが、彼は社員や関係企業を信じていたからこそ、涙を流したのでしょう。信じていた者に裏切られる気持ちは、私にもよく分かる。〝姉歯事件″のとき、私だって泣きたかった。

国家資格を持つ一級建築士がまさか耐震偽装をするなんて、考えたこともなかったし、ましてや、行政からすでに建築確認のお墨付きが下り、建物の検査済証まで受けている物件が、後になって「耐震偽装」と判断されるなんて、夢にも思いませんでした。