この国からマンション偽装がなくならない理由~「姉歯事件」から10年。ヒューザー元社長が国交省の「大罪」を告発する!

藤岡 雅 プロフィール

なぜ私は「悪人」となったか

私の顔写真はネット上で拡散されていますが、あれは耐震偽装事件当時のものです。読者の中には、05年11月29日に国会に参考人招致されたときの、怒りに打ち震える私の顔を覚えている人も多いことでしょう。

あの日私は、「ヒューザーが主導して耐震偽装をおこなった」という荒唐無稽な陰謀説を唱えるイーホームズの社長に対して、「何言っているんだよ!」「ふざけるんじゃないよ!」と声を荒げてしまいました。あの一言で、私はすっかり「悪人」扱いを受けることになってしまった。

今でもあの時の表情が皆様の記憶に残っているのはつらいことですが、私は、あの時の形相こそが、当時の私の心情をよく表しているとも思っているのです。

実は、当時、耐震偽装をした張本人である元一級建築士への怒りは、微塵もわいてきませんでした。世の中には、彼のように罪悪感もなく、平気で偽装をしてしまう人間など、いくらでもいるからです。だからこそ国はチェック機関を設け、検査体制を整えているのでしょう。

しかし、国や、国が認定している民間検査機関は、元一級建築士が行なった耐震偽装を全く見抜けなかった。つまり私は、民間検査機関だったイーホームズや、同社に対して建築確認検査機関の指定をしていた国交省に対して、本気で怒っていたのです。

不本意ながら私は刑事訴追され、「詐欺罪」で有罪とされましたが、裁判所は耐震偽装事件において、私たちヒューザーも被害者の立場にあることを認めています。私に対する判決文(第1審)にはこうあります。

<そもそもの発端は、姉歯による構造計算書の改ざんであり、そこに、確認検査機関であるイーホームズがこれを看過して建築確認をし、さらに検査済証を発行していたという事情があり、本件に至るまでに限れば、ヒューザーは耐震偽装の被害者ともいえる立場にあったことは否定できず……>

小嶋進氏

この一文は、欠陥マンションが出現するに至った構造上の問題を明確に指摘しています。建築物に対する国のチェック体制が全く機能していなかった、ということです。

あまり知られていませんが、耐震偽装の問題は、元一級建築士が設計したマンションにとどまらず、大手デベロッパーの分譲マンションにもひろがっていました。あの当時、三菱地所や住友不動産が分譲した札幌市内のマンションでも耐震偽装が見つかり、販売中止に追い込まれているのです。

ですからこの問題は、私たちヒューザーのような中堅デベロッパーや中堅ゼネコンに限った問題では決してありませんでした。問題は、「建築確認検査の不備」にあったことは明らかです。このチェック機能をどうするべきかを議論し、改革することが、当時の喫緊の課題だったのです。