なぜ日本の政治はこれほど「劣化」したのか? 
幼稚な権力欲を隠さぬ与党とセコい野党

特別対談 島田雅彦×白井聡
島田雅彦, 白井聡

面白いのは、ねじれ国会が問題になった時に森喜朗さんが、昔はよかったという話をしていたんです。五五年体制の頃は話が決まっていたと。

当時はイデオロギーの対立の時代だったから、我々政府与党としては法案を出す、それに対して社会党は批判をしてくる。ある程度の時間をかけて批判をさせると、むこうとしてもメンツが立って、この辺が落としどころだよねというところで可決させてくれると。どうしても納得いかないというなら、官邸機密費から金を出して握らせることで話をつけていたんだと。

まさにプロレス政治ですね。

ところが今は決まらなくなった。なぜかというと、イデオロギーがなくなったからだと森さんは言うんです。

イデオロギーがなくなったら、争いは思想闘争じゃなく純粋に物取り競争になる。純粋に物取り競争になると妥協ができなくなり、喧嘩が永遠に続いて何も決まらない。実に嘆かわしい、イデオロギーは必要であると、あの森喜朗さんがイデオロギーの重要性を言っている。

そういう奇妙な状況が展開されているんですが、日本の政治の構造が本当のところどうなっていたのかが、今日の視点から見るとすごくよくわかるようになってきた。では今その対立はどういう形でスライドしてきているかというと、民主党内のある一部は自民党の別動隊なんです。この人たちを民主党が切れるかどうか。そこまでの腹が岡田党首にあるか、どうもそこが怪しいのですが、我々としてはそうなるように岡田さんを追い込んでいくしかないのかと思っています。

それにしても苛立たしいのは、沖縄などとは違って、国政では本当の形での政治的対立の構造がちゃんと形成されないことです。わけのわからない形で雑多なものが並立してしまう。島田さんが『虚人の星』で、七つの人格をもつ人格分裂の人物を出されているのは、そういう状況を意識されているのでしょうか。

島田 政界再編とか言われていたころに、自民党と民主党でトランプのカードのシャッフルみたいにかなりの人員の入れ替わりがあったわけですね。

だから今の自民党は表面的には一枚岩みたいに見えていても、こんな法案を強引に成立させて、ずっとアホの首相の顔色を見ながらやっていくことは憂鬱でたまらないという自民党員もいるはずです。現に公明党にはいるわけですね。そうした中で劇的なシャッフルが起きる可能性も、無きにしも非ずかなと。