なぜ日本の政治はこれほど「劣化」したのか? 
幼稚な権力欲を隠さぬ与党とセコい野党

特別対談 島田雅彦×白井聡
島田雅彦, 白井聡

それが今は民主党にスライドしていて、民主党政権の時代もそうだったように共産党との選挙協力などあり得ないと、プチ自民をやろうとする。一応左派の旧社会党の議員がいても民主党内で軋轢が生じて、セコい権力闘争で空中分解して今日に至っています。

反自民の野党勢力の結集というのは、大変ハードルが高いのだけれども、今まで共産党が唯我独尊でやってきたのをちょっと譲歩しようとしていることは、微妙に今までとは違うのかもしれません。

本当に自民党の政権が危険すぎるので、ない袖はふれない状態の中でやれることは何かというと、ベルルスコーニを絶対に首相に返り咲かせるなという方式の、イタリアにおける中道左派連合を日本に実現させるしかないということになっていると思います。

「プロレス政治」の自立性

白井 いわゆる五五年体制の政治というのは、冷戦構造のミニチュア版だと言われますが、談合政治というか、プロレスだったんですね。

象徴的なのは、自民党が結党された時はCIAからの巨額の工作資金が入っていて、ある意味アメリカの出先機関であるという性格を持っていた。

では社会党はどうだったかというと、こちらも元々は反ソだったわけですね。ソ連万歳、ソ連べったりの共産党とは違って、あくまでソ連に対しては批判的なんだ、自分たち独自のやり方で社会主義の道を切り開いていくんだという考え方だったのが、ソ連と日本共産党の仲が途中で悪くなっていくなかで、いつの間にかソ連に接近していって、中国共産党にも接近していく。

こういうわけですから、冷戦構造の中で、自民党はアメリカの、社会党はソ連や中国の出先機関で、一体どこに自立性があるんだというような状況だった。ですが、これが不思議なことにマイナスとマイナスをかけるとプラスになるみたいな話で、こういうプロレス構造だったからこそ実は相対的に自立性があった。ポイントは傀儡でも、「ゆるい傀儡」だということなんですね。

島田さんがおっしゃったように、アメリカから日本に対して、「こうやれ」という要求があったときに、これは呑めないなということに関しては、自民党は伝家の宝刀を抜くことができた。平和憲法と社会党が強力で、「親分のおおせ付けに従いたいのは山々なんですけど、国内でうるさいのがいまして……」と最高の言い訳として使える。

他方、社会党はソ連から強い影響を受けているとはいえ、ソ連が社会党に、日本で共産主義革命を起こさせてソ連の衛星国にしようとしたかというとそんな要求はなくて、これも傀儡関係が緩かった。

緩い傀儡同士の二つの党が、「大体この辺が日本の国益だよね」という落としどころを見出すことができて、自立性がそれなりに担保される、マイナス×マイナスはプラスになる、そういう状況だった。