なぜ日本の政治はこれほど「劣化」したのか? 
幼稚な権力欲を隠さぬ与党とセコい野党

特別対談 島田雅彦×白井聡
島田雅彦, 白井聡

そう考えると、少し文学者の仕事に近いものがあるのではないかと思ったりもします。今回の島田さんの新作『虚人の星』は、安倍首相の無意識を読むようなところを意図されているようにお見受けしたのですが、いかがでしょうか。

島田 この小説は二人の人物の一人称で書かれていますが、一人称はその人が抱え込んでいる欲望や無意識を一番さらけ出しやすい。何しろその人物に憑依して、洗いざらいぶちまけさせるのだから、小説家は他人の無意識に入り込むスパイみたいなものです。

これまでの日本では大人の保守というものが機能していて、「それを言っちゃおしまい」ということはなかなか口にしませんでした。

本音と建前を使い分けて、心の深いところでは大きな野望や欲望があっても、おくびにも出さずに表面的には世論をちゃんと観察して、今ここでやりすぎると支持率が落ちるから抑えておく、という自己抑制が働いていたんですね。

ところが今は誰もが「右翼小児病」で、みんな大人であることを積極的にやめようとしていて、ものすごくシンプルに欲望をさらけ出しています。

まだ辛うじて一部のマスメディアやSNSも機能していますから、身もふたもないことを言った時にはみんなで責めるんですけどね。でも言った本人はもともとずっとそう思っているので、「何が悪いの」という感じで、自分の言葉がどう受け止められるかということの認識すらない状態です。

ですからある意味ものすごくわかりやすい。乱暴だけどシンプルでわかりやすい言葉は、あまりものを考えないで暮らしているような人々には妙に受けますからね。そういう極端な存在というのは過去にもいたし、もっと右翼的な欲望をモロに言うことを芸風とする人たちもいました。

そういう欲望の発揮の仕方がストレートすぎると左翼が怒るわけですけど、左翼の側に弱さもあって、彼らは常に有権者の側にいるというスタンスを取るんですが、その分、権力欲が弱い。

一方右翼の方は、すごくわかりやすく権力欲に凝り固まっている。もともと自民党というのは地方のボスの集まりで、全国区である自民党内で重要なポストを占めることができれば、彼らの権力欲、自己実現は達成されるので、そこに向けて努力する。

そのためにとりあえず誰もが安倍首相率いる政権の中で、安保法制を通すことに全面的に協力して、そこで何らかの功績が認められれば今のポストを続けられるし次もあるという、ほとんど近視眼的な野望が行動になって表れています。

野党のセコさ

白井 小選挙区制になって権力が党中央に集中するようになったという事情もあるんですけど、制度論だけではつまらないし、結局は制度がどうであろうが、最終的には人の根性の問題なんです。要するに、こんなものすごく近視眼的な状況でいいんでしょうか、ということですね。

野党の方はどうなのかというと、島田さんは彼らの権力欲が弱いとおっしゃいましたが、僕はどうもセコいと感じます。