堤真一や堺雅人の“極貧”下積み時代〜部屋にキノコ、食事は雑草

週刊現代 プロフィール

悶々として妻を怒鳴った

柔和なルックスで優しい父親役から冷徹な殺人犯まで、さまざまな人物を自由自在に演じる、小日向文世(61歳)。今や名バイプレイヤーとしてドラマに欠かせない俳優の一人だ。

小日向は、北海道から上京し東京写真専門学校を卒業後、演出家の串田和美氏が主宰するオンシアター劇団に入団。串田氏に鍛えられ、劇団の中心俳優として活躍する。

私生活では同じ劇団に所属する11歳年下の後輩女性と39歳の時に結婚。長男も生まれ、幸せな生活を送っていた。

 

ところが、長男が誕生した1年後に劇団が解散。突如として仕事を失ってしまう。新たに芸能事務所に所属し、映像の仕事を求めたが、舞台では知られた存在でも、映像の世界では無名だったためオファーはほとんどなかった。

小日向は当時の心境をこう明かしている。

「毎朝事務所に電話して『仕事入っていますか?』と聞くと『入っていません』とだけ言われるんです。仕方ないから、近所の公園に息子を連れて行くのが日課でした。でも公園で奥さんたちに話しかけられると、なんかいたたまれなくてね」

事務所との契約は給料制ではなく歩合制だったので、仕事がなければ給料はゼロ。生活費がなくなると、事務所の社長に給料の「前借り」をする生活が4〜5年続いた。

「妻は『もっと働いて』とは決して言いませんでしたが、仕事もなく家でゴロゴロしていると、自暴自棄になって、精神的に落ち込んだこともありましたよ。

狭い部屋ですから、妻が掃除をしていたら、横になっている僕の体に掃除機が何度も当たるんです。それで『言いたいことがあるなら言えよ!』と怒鳴ってしまったこともありました。すると妻は怒るでもなく『かわいそうに』と言って、僕を抱きしめてくれたんです」(小日向)

そんな小日向に、転機が訪れたのは'01年。木村拓哉主演のドラマ『HERO』への出演だった。これを機に様々な仕事が舞い込むようになる。

〔PHOTO〕HERO HPより

後年、小日向は妻からこんな言葉を聞いた。

「苦しい時も妻は『絶対なんとかなる』って思っていたみたいです。今の僕があるのも妻のおかげ。家族の支えがなかったらどうなっていたか分かりません。だから僕は、今でも仕事が終わったらまっすぐ家に帰るし、家族と一緒にいる時間を一番大切にしている」