信長は最強の「フランチャイズ経営者」だった!〜戦国時代のベンチャーマインド②

コルクCEO・佐渡島庸平 × 作家・木下昌輝 『決戦! 本能寺』出版記念対談
木下昌輝, 佐渡島庸平
左:佐渡島氏 右:木下氏

家庭人としての戦国武将

佐渡島 僕は歴史小説に限らず物語の構造として、二人の人物がなにかを約束して、違う人生を歩んで二度と交わらない、というのがすごく好きなんです。漫画の『サンクチュアリ』もそうだけど、今回『決戦!本能寺』で木下さんが書かれた作品にもサイコロで運命が決まる場面がありますよね。

木下 人生って予期せぬ偶然で決まることが多いじゃないですか。それは不条理だけど、それを嘆くのではなくて意図的に偶然に任せるというのはかっこいいですよね。

佐渡島 しかも、その結果に逆らわず自分の役割を演じきるというか。今回は木下さんの解釈では、信長も役割を生きていたという認識ですよね。それはすごく共感しました。一般的にみると、信長は自由で好き勝手に生きていると思われがちだけど、実は彼も役割を演じていて、そこから逃れられない。

しかも、その人がすっと見せる素の顔がすごくいいなあと思いますね。

木下 戦国武将みたいに家臣が増えると益々役割から逃げられないし、それで悩むというのはあったはずなんです。

佐渡島 今回、木下さんが細川幽斎という一般的には地味な人物にスポットライトを当てたのもいいですね。

木下 彼は武将としてはそれほどの功績をのこしているわけじゃないのですが、生き延びることに関しては天才的なんです。特にイメージ戦略に長けていて、補佐役に徹して決してナンバーワンにならない生き方をしたから家康の時代まで生き残ることが出来たわけです。

僕自身、残念ながら主役にはなれないから、脇役で光を放っている人に共感してしまうんでしょうね。

佐渡島
 信長以外は光秀も秀吉も中間管理職ですよね。

木下 戦国時代も少ないパイを奪い合っていた時代という点では今と同じなんですよ。建設会社が偽装する事件とかありましたが、戦国時代の武将もそういうぎりぎりのところで成果を出していた。

明智光秀が他家から優秀な人材を強引に引き抜いたことも、かなりグレー、というよりかなりブラックに近いのだけれど、そうしないと自分の家族や部下を守れないからなんです。

佐渡島 そういうせっぱつまった感は今も昔も変わらないのかもしれませんね。

木下 僕も会社勤めの経験があって、後輩が下にいた時はやっぱりしんどかったですよね。後輩を指導しながら上からなんだかんだ言われて、もちろん自分の事もちゃんとしなければならない。

友達はいまもそんな状況のやつが多くて、会うたびに白髪増えたなおまえ、とか。そういう意味では小説を書くときは読者がちょっとだけ元気が出るような作品にしたいな、といつも思うんです。

佐渡島 信長がお母さんに頭があがらないっていうのは、事実なんですか?

木下 よくある記述ですね。今回資料として読んだ「武家事紀」という歴史書でも、明智光秀と信長の母親が結託して信長を殺そうとしたというデマを信長が信じたために、光秀を殺そうとしたという説が書いてありました。信長がお母さんから愛されてなかったっていうのは事実ですね。