『コウノドリ』産科医が教える「正しい出産場所の選び方」
~”イケてるお産”にダマされてはいけません

鈴ノ木ユウ, 荻田和秀

もちろん、お産はイベントです。記念であり、家族ができる日でもあります。イベント性を完全否定するつもりはありません。妊婦さんに満足に分娩してもらってナンボ、なのです。自分の分娩にちょっとでも納得がいかないと、その後の子育てに影響することもありますし。おめでたいことですから、華やかな部分もあっていいと思うのです。

ただし、ちょっと落ち着いた目で見てもらいたいなと思うところがあります。

「アメニティ優先のお産と、母体と胎児の安全優先のお産、どっちを選ぶ?」ということを夫婦できちんと話し合っていますか? どちらを選ぶかは、夫婦の問題なので「こっちにしなさい」と言う気はさらさらありませんが、最低限、リスクや万が一のときにどうするのか、意見をすりあわせておくことはおすすめします。

お産スタイル、要は分娩方式については、選ぶ材料として情報をお伝えしておきましょう。

まず、「フリースタイル」。要は分娩台の上ではなく、畳の上や床の上などで分娩に挑むスタイルですが、これはむしろいいのではないかというデータもきちんと出ています。分娩台の上で産まないと危ない、などのエビデンスはありませんから、フリースタイルに関しては僕もいいのではないかと思っています。

また、「無痛分娩」も、よくないというデータはありません。これは硬膜外麻酔を行って、分娩時の痛みを和らげる方法です。「無痛分娩だと子供を可愛いと思えず、子育てに影響する」などの都市伝説は完全に無視していいです。「お産は痛みがあってナンボ」という、ばあさんの根性論もガン無視してください。

あとは、特殊な分娩方法でいえば、「水中出産」でしょうか。このあたりは、日本では推奨している医療機関はありません。十分に安全だといえるデータがないからです(逆に、ネガティブなデータが表に出てきていないだけなのかもしれません)。ドイツでは大学病院で水中出産を行っているところもあるので(僕も実際に見学してきました)、絶対にダメというわけではありませんが……。

実は僕も日本で水中出産をやっている病院に、当直医で入ったことがあります。赤ちゃんにしてみたら、生まれた後に体温が下がるというリスクはあるものの、ごく普通に生まれてくれれば、何の問題もありません。お母さんも、水中だからといってイキめないこともありません。

ただし、水中ということで「感染」のリスクは高くなります。最大のリスクは、赤ちゃんが万が一危険な状態になった場合は「蘇生」を行いにくくなるという点です。

実際に、僕は水中出産で常位胎盤早期剥離(前述)になったケースに遭遇しています。慌てて水中に飛び込んで、赤ちゃんの心音を測ったりと緊急事態になりました。結果としては、無事に赤ちゃんも生まれて、お母さんも元気で大事に至らずにすみましたが、僕は大量の水を飲みました。

そして、思いっきり足を滑らせて転びました。いや、お母さんと赤ちゃんが無事であれば、何の問題もないのですが。あとは夫婦で話し合って決めてください。