「いけずやわ、ほんまに」
〜よそ者には敷居が高い「素顔の京都」の楽しみ方

表と裏と、この街には知らない顔がある
週刊現代 プロフィール

「僕は京都市中京区、今の大丸(百貨店)があるあたりで生まれ育ったんですが、京都人には『御所以外は、みんな下町』という意識があるような気がするんです。何というか、京都は、ちんちくりんな街なんですわ。洛中だったら、タクシーでどこへ行っても1000円台ですからね。

それに、地元出身の僕でさえ、『あっ、こんなとこにええ佇まいの家があったんか』とか、『今まで気付かんかったけど、ここは良さそうな店やなあ』といった新しい発見が日々あるんですよ。

東京のお客さんには、『ようこんなとこ見つけはったなあ』と思うような高級店を、わざわざ予約して来られる方も多い。ですが、せっかくこれだけ街の至る所に面白いものがあるんですから、何もプランを立てずに歩いてみてほしいですね」

いきなり戸を叩くのはご法度

ときにはバスに乗らないで、目的地を決めずに歩き始めるのもいい。

〈♪まる たけ えびすに おし おいけ~〉と、京都っ子なら誰もが歌える「通り名の童歌」を口ずさみながら、通りの名前を覚えてみるのも一興かもしれない。

四条周辺であれば、地元の若者たちの熱気と、意外なほど猥雑な街並みが新鮮に映る。先斗町を過ぎて四条大橋を渡り、白川沿いに東へ歩くと、うってかわって静かになる。艶のある祇園の家並みと石畳の道に、今なら紅葉がよく映える。

「僕のオススメは、京都国立博物館とその裏手にある豊国神社。特別展がないときは、どちらも人が少なくて落ち着くんです」(前出・井上氏)

京都の街は、夜になるとがらりと表情を変える。とりわけ、繁華街から少し離れた場所になると、街灯も少なく、深い闇がそこかしこにぽっかりと口をあける。秋の日はつるべ落とし、辺りは暗く人通りも絶えている。鐘の音が響いて心細さがいや増してきたとき、ふいに行く手に控えめな酒場の灯りを見つけて、人心地がつく—「陰翳礼讃」という言葉を思い出さずにはいられない。

思い切って、京都の懐に飛び込んでみよう。お店の女将や、地元住まいの人に勇気を出して話しかけると、一気に視界が開ける。表に値段を出していない高級店の戸をいきなり叩くのはご法度だが、運がよければ、ガイドブックに載っている「京都らしさ」の裏側、京都人しか知らない京都を、垣間見ることができるかもしれない。