炭水化物抜きダイエットはやっぱりキケン!? 虚実入り混じる「食」の情報、その真偽をただす

【前書き公開】『食をめぐるほんとうの話』
阿部尚樹, 上原万里子, 中沢彰吾

18種類の食材を使ったサラダが1分足らずで完成

家庭における調理で最大の悩みのひとつが、使う食材の種類をどうしたら増やせるか、ということかもしれません。栄養学の専門家は、「一日に少なくとも30種の食材を食べましょう」などと指導しています。

しかし、いざ実践しようとすると、これがなかなかそう簡単にはいきません。昼食にハンバーグを食べた場合、ハンバーグに使われる食材は肉、タマネギ、卵、パン粉でせいぜい4種類。つけあわせのサラダも、レタス、キュウリ、トマトで3種類程度。卵スープに卵とモヤシ、キクラゲを入れてプラス2種類。ご飯と合わせて10種類。

何がたいへんかといって、次の夕食では昼に使った食材とはまったく異なる食材を使わなければならないこと。サンマとホウレンソウのゴマ和えに豆腐の味噌汁、ナスの漬物とした場合、サンマにホウレンソウ、ゴマ、豆腐、ワカメ、ナスで6種類しかありません。

朝食は3食のうち調理時間が一番限られますから、余計に食材を増やせません。パンと牛乳、卵、ハム、キャベツ程度? それにしてもプラス3種類です。3食とも、日本の家庭の献立としてはごくごくスタンダードだと思いますが、摂取できる食材は合わせて19種類。栄養学的な理想にはぜんぜん及びません。

しかも、毎日19種類の食材をそろえているとどうなるでしょうか。たとえばダイコンを丸々一本、1回で使い切ることは、家族数が4人くらいまでの通常の家庭でしたらあり得ないでしょう。ホウレンソウもおひたしなどで少量食べるのが普通ですから、袋詰めにした一束を一度で食べ切ることは難しい。

肉や魚もバラエティを増やすことばかり考えていると、うっかり冷蔵庫の奥にしまったパックを忘れてしまいがち。手前にあるパックばかり使って1週間もたってから、ふと思い出してカピカピになった肉やしおれた野菜を発見、泣く泣く捨てざるを得なくなったというのは、よくあることでしょう。

料理番組で「冷蔵庫の残り物で作る○○」といった企画をよく目にするのは、いかに家庭が冷蔵庫に残った食材の始末に悩んでいるかという証左でしょう。栄養学の理想たる食材数は単なる理想に過ぎず、現実離れしているといわざるを得ません。

しかし、東京農業大学の栄養学科の学生たちが作ったあるメニューでは、ひとつの料理だけで18種類の食材を確保していました。それだけバラエティに富んだ食材を加工するとなれば相当な時間がかかりそうなものですが、1分もかからずに完成。しかも、特別なプロの調理人によるものではなく、主婦でも主夫でも子供でも簡単にできるという。

もしそれが本当なら、核家族化が進み、また家族の誰もが忙しくじっくり調理することが難しい現代の家庭にとって、まさしく「朗報」です。

はたしてその正体とは……?

(* 以上のミステリーの答えはいずれも『食をめぐるほんとうの話』のどこかにあります)

阿部 尚樹(あべ・なおき)東京農業大学応用生物科学部食品安全健康学科教授。北海道大学農学研究科博士前期課程修了。博士(農学)。共著に『サクセス管理栄養士講座 食べ物と健康2 食品衛生学』(第一出版)、『健康と栄養のための有機化学』(建帛社)など。
上原 万里子(うえはら・まりこ)東京農業大学応用生物科学部食品安全健康学科教授。東京農業大学農学研究科博士後期課程修了。農学博士。共著に『栄養科学イラストレイテッド―解剖生理学(改訂第2版)』(羊土社)、『サクセス管理栄養士講座 基礎栄養学(第3版)』(第一出版)など。
中沢 彰吾(なかざわ・しょうご)1956年生まれ。ノンフィクションライター。東京大学卒業後、1980年毎日放送(MBS)に入社し、アナウンサー、記者として勤務。2006年、身内の介護のために退社した後は、著述業に転身。近著に『中高年ブラック派遣』(講談社現代新書)など。