炭水化物抜きダイエットはやっぱりキケン!? 虚実入り混じる「食」の情報、その真偽をただす

【前書き公開】『食をめぐるほんとうの話』
阿部尚樹, 上原万里子, 中沢彰吾

毎年2万人! なぜ食中毒が?

不潔な環境は食中毒の被害を大きくします。今から約80年前の1936年5月、静岡・浜松市で「大福もち事件」と呼ばれる大規模な食中毒事件が起こりました。

和菓子店で製造された大福もちが、サルモネラ菌に感染したネズミの排泄物で汚染されたのが原因とされ、2201人が発症、44人もの人が亡くなりました。日本がまだ貧しかった時代、衛生環境にまで手がまわらなかった故の悲劇でした。

しかし、現代人が暮らす生活環境は、昭和の昔よりはるかに清潔になりました。公共施設でも家庭でも、トイレも台所もきれいに清掃され、昔なら家の中の台所や天井を当たり前のように走りまわっていたネズミの姿もあまり見なくなりました。

食中毒菌を媒介するネズミが人間のテリトリーにあまりいないのであれば、食中毒は昔に比べ大幅に減っているはずです。それに加え、ドラッグストアをのぞいてみれば、抗菌グッズや除菌スプレーといった衛生商品が、大量に陳列されています。

で、食中毒はどうなったでしょうか? 実は減っていません。

1996年、腸管出血性大腸菌O-157による世界最大規模の集団食中毒が大阪・堺市で発生。患者数は1万6111人。発症から3日後に3人の少女が亡くなりました。数ある食中毒の中でO-157が特に恐ろしいのは、この菌が産生する2種類の毒素のうちのひとつが、最も毒性の強い赤痢菌が出す毒素と分子構造が同じだからです。油断すると命を落とします。

この年は岡山や広島、岐阜などでもO-157による食中毒が同時多発的に発生しました。この菌は胃酸に強いため、菌の数が少なくても確実に腸にまで達して増殖します。2012年には、調理の過程で白菜の浅漬けに移った菌により169人が発症し、8人が死亡するという出来事が起きています。

少しさかのぼると、日本が「ジャパンアズナンバーワン」と世界から称賛されていた1984年には、熊本県産でお土産用に売られていたカラシレンコンにより、千葉から宮崎までの日本各地1都1府12県で36人が発症し、11人が死亡しています。

カラシレンコンはカラシ粉を詰めたレンコンを高温で揚げてフライにしたもので、さらに真空パック入りで販売されていました。いったいこのしつらえで、どうして食中毒になってしまうのでしょうか――。

日本でも世界でも、食中毒事件は減ってはいません。むしろ大型の食中毒事件は、戦後、日本が発展を遂げた1970年代以降、今日までの期間に頻発しています。昔よりはるかに清潔になっているのに、これはいったいどうしたことなのでしょうか。