炭水化物抜きダイエットはやっぱりキケン!? 虚実入り混じる「食」の情報、その真偽をただす

【前書き公開】『食をめぐるほんとうの話』
阿部尚樹, 上原万里子, 中沢彰吾

ちなみにこのトライアルには切実な理由がありました。会社勤めをしていた40代のころの体重は58キロ。その後、主夫として家で家事をしている時間が多くなると、約10年で70キロを超え、その分が腹部に集中したため会社員時代に買ったスーツがすべて着られなくなりました。体を元に戻して服に合わせることにしたのです。

まず、食事の回数を一日1~2回に制限。朝は起き抜けに市販の野菜ジュースを1杯。昼は何も食べずブラックコーヒーや水などでまぎらせました。夜は気のすむまでたくさん食べましたが、肉や魚をメインにし、野菜は生のサラダか、野菜炒め、味噌汁の具などとしてできるだけ多く食す。炭水化物はせいぜいが小麦粉を原料とする餃子の皮程度。

すると、2~3日たって体が徐々に慣れてきたせいか、昼間はさほど空腹を感じなくなりました。体重は目に見えて減っていき、毎日、体重計に乗るのが楽しくなり、その喜びがさらに我慢を後押ししました。

ところが、2週間もたつと体に変調が表れます。一般に暴飲暴食して内臓が弱ったとき、唇の両端がただれて痛むことがあります。その症状がひどく出て口を開けられなくなり、さらに口内炎もできて、ものが食べにくくなりました。

これはとても意外でした。「一日に必要な野菜の栄養が摂れる」と謳っているジュースを毎日飲んでいましたし、夕食にトマトやキャベツ、ニンジン、ダイコン、シシトウ、ホウレンソウなどを輪番で食べ、ワカメやコンブも食べていたので、必要な栄養は摂れていると思っていたからです。

意外なことがもうひとつ。夕食でたっぷり食べても飢餓感がなくなることはありませんでした。

肉や野菜は見るのも嫌なのに、白いご飯やうどんが無性に食べたくて、それはのどの渇きにも似た切実な渇望で、テレビでおいしそうな丼ものの映像など見てしまうと、もう我慢できません。深夜営業している牛丼屋に走ったものの、外の風にあたると気分が変わり思い直して途中で引き返すという、無駄なことを何度か繰り返しました。

そうこうするうちに体調はどんどん悪化。朝、ベッドを出る際は、必ず立ちくらみを起こし、時折何かの拍子に動悸を感じることも。大便の回数は2日に1回から、出ない時は1週間に1回になり、ひどい便秘に苦しむことに。

体重は2ヵ月程度で目標を達成しましたが、体調はますます悪くなり、じっとしているのに疲労感、倦怠感、脱力感が増し、ついにはモノを取るために腕を上げることすらおっくうになってしまいました。手先がしびれたり震えたりしてキーボードを打てず、仕事ができなくなったため、このダイエットは中止せざるを得なくなった――。

炭水化物は悪玉のはずなのに、どうしてこんな惨状になってしまったのでしょうか。