[ボクシング]
杉浦大介「日本人ボクサーは“次の段階”に進めるか ~三浦隆司vs.バルガス、ラスベガス決戦を前に~」

スポーツコミュニケーションズ

 そして、今週末、日本ボクシング界はさらに前に進む絶好のチャンスを得た。6度の世界タイトルマッチですべてダウンを奪い、そのうち4戦でKO勝利を飾った三浦隆司を、稀にみる大舞台に送り出すことができるのである。
「やってみなければわからないですけど、日本と同じような試合ができるならば、きっと喜んでもらえると思います」

 本人の言葉通り、そのパワフルなボクシングはアメリカ、メキシコ、プエルトリコといった国のファンをも惹きつけるはずだ。

(バルガスのプロモーターはオスカー・デラホーヤ。元スーパースターに実力をアピールするチャンスだ Photo By Kotaro Ohashi)

 もちろん挑戦者のバルガスも好選手だけに、楽に勝てる相手ではない。三浦が敗れたとしても大きな番狂わせとは呼べない。それはつまり好ファイトになる可能性が高いことも意味する。好戦的な両者が真っ向から打ち合い、年間最高試合レベルの激闘になっても誰も驚くべきではない。
「凄い大きなイベントだというのは、こういう会場を見ても感じました。それにふさわしい試合をしたいなと思います」

 三浦はそう語っていたが、実際にボクシングをエンターテイメントと考えるアメリカでは、単なる勝ち負けだけでなく、試合の面白さも追求される。そんな場所で行うのに、三浦vs.バルガスはうってつけのカードだ。この一戦が期待通りの激戦になり、三浦が勝ち残った際のインパクトは計り知れない。

 ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、セルゲイ・コバレフ(ロシア)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)といったスターが次々と飛び出したことで、最近の米リングでは旧ソ連圏のボクサーが好待遇で迎えられるようになった。それと似たことは、日本のボクサーにも起こり得るはずである。

(会見の壇上で「必ずKOで勝って防衛しますので、期待して見ていてください」とKO宣言を行った Photo By Kotaro Ohashi)

 軽量級に人材が偏っているという難しさがあるとはいえ、井上尚弥、内山高志、山中慎介らは世界中のどのリングにも胸を張って送り出せる選手たち。ここで三浦が火をつければ、日本のボクサーがより好意的に、良い条件で迎えられ始めることになるかもしれない。だとすれば、三浦vs.バルガスは業界にとっても重要なターニングポイントになり得るファイトなのだろう。

 世界に通用するボクサーが続々と登場する日本のボクシング界は、かつてないほどの人材を擁している。そして今まさに次のステップを踏み出すとき。WBA、WBCなどのいわゆる“アルファベットタイトル”を獲得するだけでなく、本場のファンからも認められる真の王者へ。三浦が先陣を切って、そんな位置に到達する瞬間は間近に迫っているのかもしれない。

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール>
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを 中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の 媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。
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