「ソフトバンクに負けて、足りないものがわかった」
ヤクルト真中満監督・独占インタビュー

2年連続最下位からの優勝、そして惨敗を振り返る
週刊現代 プロフィール

5月9~10日の秋田遠征中、球場のベンチ裏の、誰にも見つからない場所に、山田をこっそり呼び、こんな話をしました。

「(野球は)みんなでやるもの。だからあまり自分を追い込まず、去年の数字も追いかけず、自分のペースでやれよ」

その遠征中に山田は本塁打を放ち、浮上のきっかけをつかんでくれた。終わってみれば、打率・329、38本塁打、34盗塁と立派な数字を残し、「トリプルスリー」を達成、14年ぶりのリーグ制覇の原動力となってくれました。

プロは自分で気づくしかない

春季キャンプで「自主性」を掲げ、個人練習の時間を意識して増やしたときは、周囲から「最下位チームがそれで大丈夫か」という声があがりました。「超放任主義」とも報道されましたが、私なりの狙いがありました。

'11年から3年間つとめた二軍監督の頃から見ていた山田や川端慎吾、中村などはすごく真面目な性格。メニューを与えてしまったら、ただそれをこなすだけで終わってしまう危険性があった。それでは、スランプに陥ったりしたとき、誰かに助けを求めてしまう。そのコーチだって、いつまでもチームにいるわけではないんです。

山田は、昨年から試合前、杉村繁打撃コーチとマンツーマンで、実際に試合で使うものより軽いバットで11種類のティー打撃を行い、速いスイングスピードを体に染み込ませる努力を続けました。山田は常に自主的にテーマを持って練習に取り組んでいたからこそ、開幕当初の不振から抜け出す光を見出せたのだと思います。

監督1年目で優勝することはできたけど、日本シリーズでソフトバンクには勝てなかった。わずか1勝です。主将で4番の内川聖一選手がいなくても、その穴を感じさせなかったし、走攻守において層の厚い素晴らしいチームでした。

中継ぎ陣や打線に、そこまで差は感じなかった分、先発投手の差が出てしまった。もっと粘れていれば、展開が変わっていたと思います。

先発陣が全5試合とも5回持たなかった。ソフトバンクで今季チーム最多の13勝をあげた武田翔太、9勝0敗と一度も敗戦投手にならなかったバンデンハークの安定感を見て、ウチの投手陣が「彼ら以上の投球をしないと勝てない」と意識過剰になった。それでコースを丁寧につこうとしてボールになり、リズムを崩した。第4戦に先発した34歳の館山昌平は制球が命なのに、三回までに4四球で5失点。このシリーズを象徴する内容でした。

ソフトバンクには、現場レベルだけでなく、孫正義オーナーや王貞治会長を筆頭に、球団全体で「このチームを常勝チームにしていく」という意気込みを感じます。象徴的な存在が、彼らの三軍制にあると見ています。ヤクルトは支配下登録選手の上限70人で戦いましたが、ソフトバンクは育成契約を含めると90人抱えている。その育成選手を指導できる監督、コーチも採用できる資金力は、球界でも屈指だと思います。

日本シリーズで2試合に登板し、中継ぎとして150キロ台の直球を連発した千賀滉大投手も、'10年に入団するときは育成枠でした。千賀の将来性を見抜いたソフトバンクのスカウトが獲得を決め、日本シリーズで投げられる一人前の選手に育てたのです。

今季就任した工藤公康監督は、支配下登録を目指す三軍選手、一軍昇格をいつでも狙う二軍選手を、足しげく視察に訪れている。昼間に地元・福岡で二軍戦が行われ、夜に一軍がヤフオク!ドームで試合があるときは、そこで成長株や好調の選手を発掘するため、二軍の試合を視察して、一軍の試合前練習に遅れて参加することもあるという。その目に留まった2年目の上林誠知外野手は8月下旬、プロ初アーチとなる満塁弾を放ち、強烈なインパクトを残した。

工藤さんは、勝ち続けているチームの勢いを止めないよう、ベンチでの雰囲気作りを大事にしていると感じます。エラーしてベンチに戻ってきた選手も笑顔で迎えている。失敗をおそれない雰囲気が、選手のさらなる力を引き出しているのかもしれません。