これぞリアル『下町ロケット』だ!
大企業のイジメに負けなかった「町工場の物語」

世界のグーグル相手に戦った男もいる
週刊現代 プロフィール

「勘弁してください! こっちは借金したばかりなんですよ!」

必死に食い下がる植松氏に、担当者は続けてこう言い放った。

「おたくが勝手に拡大路線を取っただけでしょ。ウチは知りませんよ」

植松氏のもとに残ったのは、2億円もの莫大な借金だけだった。

「とにかく借金をどうにかしなきゃいけないので、日本中を駆けずり回って営業をしました。そして、飛行機に乗るたびに『今日こそ落ちてくれ』と祈った。落ちれば保険金で借金が返せるから、と。僕の子供がもらってきたお年玉を全部取り上げて、支払いに回したこともありました」

特許を盗もうとする大企業

地道な飛び込み営業を続けたものの、努力は実らなかった。なんとか倒産だけは免れていたが、借金はいっこうに減らなかった。

それでも、転機は訪れた。ある大手建機メーカーが、同社のリサイクル用マグネットに注目。「我が社で使いたい」という申し出があり、共同開発することになった。

だが、またしても予期せぬ苦難が降りかかる。今度は特許侵害問題が起きたのだ。

「仕事を横取りされたと思ったんでしょう。昔からその建機メーカーと付き合いのある会社が訴えると言ってきて、『植松電機が特許侵害をしている』と書いたビラをうちの取引先にばら撒いたんです。すべての取引先が、『もう植松電機からマグネットは買えません』と言ってきました」

植松電機の経営は完全に行き詰まった。だがそれでも、植松氏の心は折れなかった。

長年、マグネットの独自開発を続けてきた植松電機が、特許を侵害しているわけがない——その自信が、植松氏を支えた。

「うちは'70年代からマグネットを作っていました。僕は小学生のときから父を手伝い、その姿を見てきた。だから先に技術開発をされているわけがないと確信していました。

そこで、向こうの特許をよく調べてみたら、やはりうちが先に開発した技術だった。昔の資料や販売実績の書類など、証拠をかき集め、提出しました。それを見て勝てないと思ったんでしょう。相手は訴訟を断念した」