スピンク(犬)が見た作家・町田康の仕事ぶり……「小説の執筆と言いながら、何しているの?」

【特別公開】スピンク日記3
町田 康 プロフィール

 告白すれば、去年の夏、私はまだ生後四箇月の子犬で、ものの分別がつかない年頃でした。散歩に行きたいとなると、もう我慢ができず、ポチが仕事をしていようがなんだろうがお構いなしに、ガウガウいって衣服の袖や裾を噛み、首をぶんぶん振って引っ張りました。

 秋になっても冬になってもそんな調子でポチの普段着はほとんどが襤褸(ぼろ)布のようになってポチは情けながることしきりでした。

 しかし、今年の春になって一歳を過ぎ、私もそういうことはしなくなりました。

 なぜなら、ポチは自分は人間で小説家だ、と思いこんで威張っていますが、やはり、前世が犬だけあって失敗も多く気の毒で、やはり私がしっかりしないとこの家は回っていかないという自覚が徐々に芽生えてきたからです。

 また、今年の春、キューティー・セバスチャンが家にきたのも大きいです。

 このキューティー・セバスチャンが家に来ることになったことについては、一通りや二通りでない経緯があるのですが、そんなことを言っているうちに、例の、ぴゃらん、という音がしました。主人・ポチがようやっと一日分の仕事を終え、書類を保存した音です。

 ということは散歩の時間で、そういえばもはや私は随分、散歩に行きたい気分です。行ってきます。キューティー・セバスチャンのことについては、また今度に申し上げましょう。

(つづきは本書『スピンク日記』でお楽しみください!)

スピンクの笑顔シリーズ最終巻!