ベストセラーを生む秘訣
「どんでん返しの魔術師」ジェフリー・ディーヴァーが明かす

特別インタビュー
週刊現代 プロフィール

―ニューヨークの地下を舞台に、毒薬で刺青を刻み、被害者の皮膚に謎めいたメッセージを遺すという凶悪な殺人事件が連続します。タトゥーを使った犯罪のアイデアはどこから?

ある日、レストランで食事をしていた時のことです。ふとウエイトレスを見ると、ノースリーブのシャツから、漢字があしらわれた東洋風のタトゥーが覗いていました。

それが、私には暗号のように見えたのです。その瞬間、ウエイトレスにこう言いました。「あなたは今、誰かを殺す手段を私に教えてくれた」と。

―リンカーン・ライムと犯人とのスリリングな知能戦は圧巻です。創作の秘訣を教えて下さい。

私は少なくとも、一年に1冊の本を出版します。最初の一文字を書く前に、8ヵ月間を、取材とアウトラインを書くことに費やします。今作の場合は、アウトラインだけでおよそ150ページにも及びました。すべてのプロットの要素、犯行とそれを解き明かすヒント、もちろん登場人物まで、事細かに設定するのです。

アウトラインを詳細に書く理由は二つあります。一つは、物語には構造が必要だということ。もう一つは、よいアイデアが浮かんだからと言って、それをすべて文章にすればいいというわけではない、ということです。

私はライムのように頭は良くありません。ただ、一つ才能があるとすれば、ビビッドな想像力を持っているということでしょう。次から次へとプロットが浮かんでくるので、物語にまとめていく時に、減らしていくのです。

―『ボーン・コレクター』など過去の事件との繋がり、凶器や毒物、地下の構造、聖書の引用や隠れた人間関係など、練り上げられた設定が、最後にすべて結びついていく筆力は圧巻です。ラストの大どんでん返しは、あなたの代名詞ですね。

私はかなり周到に、一つ一つのサブプロットで、謎を提起し続けます。そうして読者の頭に浮かんだクエスチョンに、最後には答えなければなりません。

読者の頭を殴りつけるような衝撃ではなく、さりげなく疑問の種を蒔いていく。読者がどこでイライラしはじめるか、という絶妙なかけひきを、書き手は知っておく必要があります。

結末に対しては慎重になるものですよ。完璧に「振り付け」されていないとね。そんな調子のいいことは現実には起こらない、“Give me a break!(いいかげんにしろ!)”と読者に思われてはいけないですから。

―現在のアメリカが抱える問題が、作品中に取り入れられていますね。

読者が本におカネを払うのは、知的なパズルを解いたり、メロドラマを楽しむためだったりします。本とは、様々なレベルで読まれるものです。

これまでも、ナチス至上主義や、エネルギー問題などを取り扱ってきましたが、今作ではアメリカの政治的な過激主義を取り入れました。地政学的な要素を取り入れることで、作品は一歩進んだ「文学」になる。堅苦しい話は抜きにして、日本の読者にも、私の本を楽しんでもらえたら嬉しいですね。

(取材・文/大野和基)

ジェフリー・ディーヴァー(Jeffery Deaver)/'50年シカゴ生まれ。『ボーン・コレクター』『ウォッチメイカー』『ゴースト・スナイパー』などの「リンカーン・ライム」シリーズや「キャサリン・ダンス」シリーズが世界でベストセラーに。他著に『007白紙委任状』『限界点』など

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『週刊現代』2015年11月28日・12月5日号より