作家・町田康「私にとって特別な連載でした」〜スピンク日記特別公開

「私はスピンクといいます。犬です」
町田 康 プロフィール

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 なぜ、私がそんなひどい目に遭ったかと言うと、これも後でわかったのですが、私はどうやらブリーダーと呼ばれる人のところにいたようで、私の兄弟が次々と居なくなったのは、お客に買われていったからで、残った私たちは、所謂ところの、売れ残り、だったようです。通常、ブリーダーと呼ばれる人たちはそうした売れ残りは、引き取り専門の業者に引き渡すそうです。

 そうなるとどうなるのか、というのは私にはよくわかりませんが、血統のいい犬は種犬として使い、或いは、ネットで、激安1円スタート、と謳って売り、或いは処分されるそうです。処分ということは殺すということです。

 幸いにして私たちのブリーダーはいい人で、売れ残りはみな自分の家で飼ってくれるつもりだったのですが、家族に病人が出て、飼えなくなり、ほうぼうで引き取り手を捜し、主人・ポチと美徴さんが飼ってくれることになったのだそうです。

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 そんな美徴さんと主人・ポチがどんな人かと言うと……、なんて言ってると、ぴゃらん、という音がしました。これは主人・ポチが仕事を終えて、書類を保存した音です。ということは、午前の散歩に出掛ける時間で、主人・ポチと美徴さんについてはまた後で申し上げることにいたします。

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スピンクの笑顔ポチの家にやってきて10年。突然に訪れた、別れ。シリーズ最終巻!