欧米諸国が歴史的に犯した「二つの誤り」〜だからテロリストは今日も生まれる

「普遍的価値」という名の横暴と欺瞞
内山 節 プロフィール

根強く残る差別

まだベルヴィル地区にたくさんのアラブ人たちが暮らしていた頃、パリで知り合ったフランス人たちは私に「行かないように」と忠告してくれたものだった。危険地帯だということである。アラブ人の多いところは危険地帯だとみなされていたのである。

私の経験からいえば、そんなことは全くなかった。むしろ観光客のよく行くところの方が、泥棒などが集まっていて危険なくらいだ。

ベルヴィル地区で私が困ったことといえば、「日本人」をみつけた子どもたちがうれしそうな顔をして走ってきて「空手を教えて」とせがまれたことくらいだった。

「日本人だからといってみんな空手ができるわけではない」と言っても、「そんなはずはない」と許してくれない。そのうち大人のアラブ人が近づいてきて子どもたちをたしなめてくれる。

おそらくこんな穏やかな景色のなかから、テロリストたちも生みだされていったのである。

内山節(うちやま たかし)
1950年、東京生まれ。哲学者。1970年代より東京と群馬県上野村を往復して暮らしている。主な著書に『労働過程論ノート』『哲学の冒険』『時間についての十二章』『森にかよう道』『貨幣の思想史』『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』などがある。主要著作は『内山節著作集』(全15巻、農文協)に収録されている。最新刊は『いのちの場所』(岩波書店)。
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