ごく普通の若者がなぜ「レイシスト」に豹変するのか?

在特会会員の素顔と本音
安田 浩一 プロフィール

この日、私の取材に最も積極的に応じてくれたのは、39歳の自動車整備士だった。ラガーシャツにジーンズという姿で街宣に参加した彼もまた、少なくとも私の前では「好青年」であった。

話を聞かせてくれと頼む私を、「じゃあ、ちょっとついてきてください」と近くの駐車場に案内する。そこには彼の愛車である真っ白なミニバンが停まっていた。彼はリアハッチを開けると、私になかを覗き込むよう促した。

目に飛び込んで来たのはゆうに100枚は超えるであろうDVDである。しかもそれらはすべて音楽でも映画でもなかった。

「在特会の動画です。サイトにアップされた街宣やデモの動画を、DVDに焼いた(コピーした)ものです」

少しばかり得意げな表情を見せたところに、このDVDが彼にとっていかに大事なものであるのかが理解できた。

彼もまた、ネットで桜井の演説動画を目にしたことが在特会入会のきっかけになったと語る。

 

「動画の力はすごいですよ。ストレートに言葉が伝わってきます。僕もはじめて在特会の動画に接したときは衝撃を受けました。堂々と『朝鮮人は出て行け!』なんて叫ぶ人、見たことありませんでしたからね」

必死になってネットをたどり、在特会の動画を見まくった。そのうち自宅のパソコンで視聴するだけでは飽き足らなくなる。

自分でDVDに焼き付けたり、在特会の専属カメラマンからDVDを1枚1000円で購入、車載の再生機を用いて毎日の通勤時間をも動画視聴にあてるようになったという。

「勉強になりますよ。日本がいまどのような状況にあるのか理解できるだけじゃなく、演説のしかたとかも」

彼は「桜井会長を尊敬している」と言い切る。

「たしかに言葉はきついかもしれません。ですが、そこまでしなければ誰にも注目してもらえないじゃないですか。いままで保守を名乗る人々は、在日問題にしても、増え続けるシナ人の問題にしても、はっきりと伝えてこなかった。だから外人が特権を身につけるようになってしまったんです。

会長はそのことをストレートに訴え、世の中に問題提起したんですよ。少なくとも多くの人がそれで在日特権についての理解を深めてくれた。僕自身、在日特権という真実を桜井会長の演説ではじめて知ることができたんです」

幼かった頃、彼の祖父母は祝祭日になると玄関に日の丸を掲げていた。子ども心に、美しい光景だと思っていた。日の丸に象徴される日本を大事にしたいと思った。

しかし大人になったいま、祝祭日に日の丸を掲げる者は自分の両親も含めて、ほとんどいない。そんなことをすれば「右翼」だと呼ばれてしまう風潮がある。ずっと、納得できない思いを抱えてきた。

中学、高校では部落差別を学ぶ「同和教育」を受けた。この時間がたまらなくイヤだった。

「なぜ、知らなくてもいいことを学校は教えるのか。身の回りに差別など存在しない。それなのに学校はくどいくらいに『差別はよくない』『人権が大事だ』と強調するわけです」

その反動から「人権」「差別」といった言葉に反発心を覚えるようにもなった。

専門学校を卒業した彼は、自動車販売会社に整備士として就職する。職場では、あまり政治的な話はしない。理解してもらうのは難しいと思っている。

北朝鮮による拉致事件が明らかとなったとき、身の回りの人間はみな憤慨していた。それでも、そんな野蛮な朝鮮人は日本から追い出したほうがいいという意見を耳にすることはなかった。

「僕は拉致事件がどうしても許せなかったんです。いったい北朝鮮とはどんな国なのか。

ネットで検索を重ねるなかでヒットしたのが在特会の動画。これによって北朝鮮のことだけでなく在日の存在もまた、日本を危機に追いやっているのだと理解することができました。真実を知ってしまったんですよ」

真実――在特会に関係する者の多くが好んで使う言葉の一つだ。「真実に目覚めた」「真実を知った」。リソースとなったのは、いずれもネットである。

新聞、雑誌、テレビによって隠蔽されてきた真実が、ネットの力によってはじめて世の中に知られることになった。

そして目覚まし時計で叩き起こされたときのように、ハッとして起き上がり、それまで見えてこなかった日本の風景を彼らは目にするのである。