ごく普通の若者がなぜ「レイシスト」に豹変するのか?

在特会会員の素顔と本音
安田 浩一 プロフィール

「あえてカルデロンの地元でデモをしたのは、市民にも地元行政にも、もっと危機感を持ってもらいたかったからですよ。国外追放はかわいそうだというお涙頂戴報道が溢れるなか、地元では問題の本質が少しも理解されていない。国外追放反対の署名活動までおこなわれていますからね。

密入国した犯罪外国人を放置しても、本当にかまわないのか。我々はそのことを訴えたかったんです。そもそもカルデロンがかわいそうだという主張は、正規の手続きを経て日本に来ている外国人に対しても失礼な話じゃないですか」

 

「不法入国を許すな」という訴えが、ある一定の層に対して相当に強力な説得力を持つのは事実だろう。福岡支部の彼女も、そこに在特会の"正義"を見たのである。

「法律違反を許さない、犯罪を許さないというのは、当たり前の主張じゃないですか。でも、その当たり前のことを堂々と口にできないのが今の日本なんです。在特会は、そんな状況に対して正論をぶつけただけなんです。私はその姿に感動したんです」

その「感動」が彼女を在特会へ導き、入会から1年後には「恩知らず! 恥知らず! 礼儀知らず!」と在日コリアンを街頭で罵るまでになったのだ。

この日、大分ではじめて街宣に参加したという男性(32歳)も、「正しいことを正しいと言えない日本」への苛立ちを私に訴えた。大分県内で家業の農家を継いでいるという。朴訥な印象の青年だった。

「日本は左翼勢力が強すぎる」と彼は言った。

メディア、教育、そして政治家。どこもかしこも左翼に侵食されているというのが彼の認識だ。いや、これは在特会員にとっては、きわめてスタンダードな考え方でもある。

当の左翼からすれば腰を抜かすほどの過剰評価ではないのかと思うのだが、彼らからすれば、まともな軍隊を持つことができないだけでも十分に「日本は左翼!」なのである。

「社会主義なんて、とっくの昔に終わっている。世界中で失敗したのは誰の目にも明らかであるのに、日本ではいまだに左翼が強いのですから、どうかしていますよ」

この男性は子どもの頃から「強い日本」に憧れていた。外国人にナメられない、日本人のための日本であるべきだと思っていた。

しかし学校で教わったのは「平和を目指す日本」「差別のない日本」であり、テレビをつければ、これまた「左翼的な言説」が幅を利かせていた。

「在日の問題にしてもそうなんです。差別はいけないとか、同じ人間だからとか、そんなことばかり教えられてきました。でも、なんで外国人が特別に守られなければいけないのか、僕にはよくわからなかったんです。みんな神経質になりすぎている。

僕の知り合いの在日は『祖国(韓国)に誇りを持っている』と言うのですが、それではなぜ日本に住んでいるのか。それは、彼ら在日が日本で優遇されているからなんですよ。特権に甘えているんです。

多くの人間はそのことを知っていながら指摘しない。怖いのか面倒なのか知らないけど、保守を含めて日本人はこの問題をずっと避けてきたんですよ」

悶々とした気持ちを抱えていたときに、彼はネット上で桜井誠の動画と出会った。それまで保守の人間というのは行儀が良く、おとなしく、議論下手な者ばかりだと思っていた。

しかし桜井は違った。桜井の口からは機関銃のように言葉が飛び出してくる。どこまでも攻撃的で容赦なかった。保守の側にも、これだけ力強い人間がいるのかと感動した。日頃自分が抱えている不満や疑問を、桜井がすべて代弁してくれたような気持ちになった。

「こんなにも力強い味方がいたのかと嬉しくなったんです」

自分は独りじゃない――そう感じたのだという。

この日、街宣に参加することは同居している両親には告げてこなかった。

「たぶん、こんな活動に参加したと知ったら心配すると思います。

僕の両親は、僕ほどには日本が危ない状況にあると思っていません。それに県内の農家ではいま、人手不足を補うために中国人の実習生を積極的に招いています。

僕の家でも、いつかはその流れに乗るかもしれない。これからも表立って活動に参加することはできないかもしれませんね」

つい先ほどまで、桜井や副会長の先崎が、「犯罪シナ人は出て行け」と叫んでいたばかりである。いずれは中国人の雇用も考えなければいけない農業現場で働く彼にとって、その点だけは複雑な思いで聞かざるを得なかったであろう。

だからなのか。彼が去り際に、ぽつりと漏らした一言が印象的だった。

「中国人には、マトモな人がいっぱいいるんですけどね……」