【ゼロからわかる】危機の震源シリアで何が起きているか〜"参戦"したロシアの思惑から問題の歴史的背景まで

第二次世界大戦後「最大の人道危機」はこうして生まれた
笠原 敏彦 プロフィール

話は少々複雑になるが、シリア内戦では、シーア派の地域大国イランがアサド政権を支援して“参戦”していることも見逃せない。

イランには、サウジアラビアやペルシャ湾岸諸国、トルコなど親米スンニ派国家優位の現在の中東の秩序を覆したいという思惑がある。シリア内戦で、ロシア、イラン、アサド政権の「枢軸」が形成されている背景である。

ロシアとイランというリビジョニスト国家(現状変革国家)の中東における共闘はイラクへも拡大し、対テロ戦争のための「情報センター」をイラクに設置。ここでも、米露の綱引きが本格化し、米国は、シリアとイラクがともにリビジョニスト側の影響圏に落ちることへの懸念を強めているのである。

オバマ政権の迷走

プーチン大統領がオバマ大統領に提案しているのは、対ISでアサド政権も含めたグランド・コアリッション(大連合)を組むことだ。しかし、アサド政権の退陣を求めてきた米国はその看板を下ろすことができない。

米誌タイムによると、ロシアはまず反政府勢力を潰すことで、米国に対し、対ISでパートナーを組む相手はロシアしかいない、という状況作りを狙っているのだという。そこには、目標に向け、着実にコマを進めようとするプーチン大統領のしたたかな姿が見えてくるのである。

これに対し、オバマ政権は迷走している。昨夏から有志国連合によるイラク、シリアでの対IS空爆を始めたが、その頻度はこれまで「霧雨のようなもの」だったという。

シリアでは、穏健派の反政府勢力に軍事訓練を行いアサド政権打倒を目指したが、効果はほとんどなく挫折。戦闘能力のある反政府勢力への武器供与へと政策を変えていた。

オバマ大統領は、一昨年夏には、シリアの化学兵器問題をめぐり、警告していた空爆を取り止めた経緯もある。そこに浮かび上がるのは、シリア内戦終結に向けたオバマ大統領の強い政治的意思の欠如である。