残念ながら、もう手遅れです。認知症「1000万人」社会がくる!

人類史上かつてない異常事態へ
週刊現代 プロフィール

慶應義塾大学の佐渡充洋助教と厚生労働省の試算によれば、昨年の時点で認知症の介護・医療費、家族の負担といった「社会的費用」は年間14兆5000億円にのぼっている。2025年には、その額は20兆円近くに膨らむ見通しだ。

認知症対策に使われる国家予算があまりに膨大になれば、「認知症の高齢者に、そこまでしてカネをつぎ込む必要があるのか」という議論も今後は起こりかねない。

誰を切り捨て、誰を助けるのか。それとも、全員で一緒に滅ぶのか——年金の原資が吹っ飛ぶかどうかの瀬戸際に追い込まれれば、全国民が見て見ぬふりを続けてきた、まさに「パンドラの箱」が開く。

こんな空恐ろしい事実もある。政府は、「経済財政の中長期試算」を2023年分までしか発表していないのだ。

もし政府が、2025年前後に「社会保障制度が立ち行かなくなり、日本は財政破綻する」と予期しているのだとしたら。日本はその頃、徴兵制ならぬ「徴介護制」もやむを得ないような状況に追い込まれているかもしれない。

介護離職者も数十万人に

'00年に介護保険制度が導入された後、福祉・介護分野へ乗り込んだ民間企業は数多かった。しかし、大手のコムスンやワタミは不祥事などもあり撤退。倒産に追い込まれる事業者も増える一方だ。

「介護は、モノを作って売るといった事業とは勝手が違いますし、どんどん儲かるというわけでもありません。営利企業が参入しても、なかなかうまくいかないのが実情です」(前出・宮澤氏)

認知症の高齢者はどんどん増えるのに、介護の担い手はまったく足りない。にもかかわらず、安倍総理は今年9月「2020年代初頭までに、介護離職ゼロを目指す」という目標をぶち上げた。厳しい現実と、明らかに食い違った目標だ。

総理の発言と反対に、これから2025年までの間、介護離職の増加が大問題となるのは間違いない。総務省の調べによると、その数はすでに年間10万人に達している。10年後には数十万人になるだろう。

働かないと、生活が立ち行かない。しかし、自分が介護するしかない——こう悩む人も、認知症の高齢者と同じ数だけ増える。

「今後数十年間、現役世代の人口が増えることはありません。一人一人の収入が大幅に増えるということもないでしょう。

それなのに、いきなり『もう国は面倒を見きれないから、認知症は家族で何とかしてくれ』と言われて、対応できる人がどれだけいるでしょうか。まずは現役世代の所得水準を上げることが必要なはずです」(前出・松谷氏)

現役世代の活力と生産力が介護に食われ、経済のパイが縮み、社会保障の財源となる税収はますます減る。日本はもう、そんな負のスパイラルに片足を突っ込んでいる。

十分な介護を受けられない認知症の高齢者が、町に溢れる日があと10年でやってくる。日本人は「座して死を待つ」しかないのか。

「週刊現代」2015年11月21日号より