二宮清純「掛布雅之『3人の打撃の師』を語る」

二宮 清純 プロフィール

背中から教わった見守る勇気

 3人目の遠井吾郎さんは現役時代、“酒豪”で有名でした。また、温厚な人柄から“仏のゴローちゃん”という愛称で親しまれました。遠井さんが打撃コーチに就任した78年といえば、掛布さんの5年目。もう歴とした主力選手でした。

 しかし、その年、掛布さんは頭に死球を受け、不本意な成績に終わりました。ネット裏の住人の中には「掛布の不振は遠井の責任」という人もいたそうです。

 苦しむ掛布さんに、遠井さんはマシンのボールを詰めながら、こう言ったそうです。

「カケ、オマエは3割バッターだ。そのオマエにオレが何を言える? オレはただオマエの手伝いしかできんぞ」

 何も言わず、じっと見守る勇気。掛布さんは、それを遠井さんの大きな後ろ姿から学んだそうです。

「タイガースで教わったことを若い選手に還元したいんです」

 幾分、胴回りの丸くなった背番号31。それでもユニホーム姿の似合う掛布さんです。