これは国家による子どもたちへの「虐待」だ! 施設で育った子が抱える見えない病「愛着障害」

徳 瑠里香 プロフィール

国による虐待?

「彼の言うことをきかないと物事が前に進まず、生活が成り立たないんですよ。もう振り回されて、うつ状態になってしまうくらい大変でした。

母親にも『里親なんて辞めなさい』と心配されたんですが、私はそのとき『でも、かわいいときはかわいいのよね』と答えていたんです。それってまるで、DVを受けた女性が放つ言葉のようだと思って自分でもぞっとしましたね」

里親をはじめて9年経つ石井咲恵さん(仮名、30代)は、愛着障害を抱えた里子の育てにくさをそう語った。

石井家の里子、健太くん(仮名、当時11歳)は生まれたときから施設で育ち、11歳で石井家に迎え入れられた。健太くんも「愛着障害」を抱えており、暴れたり甘えたり、咲恵さんはじめ家族を振り回す行為を繰り返した。

小学校5年生にもなると外で遊ぶ機会も増えてくるが、健太くんはすぐに友だちに啖呵を切って殴りかかってしまう。そのため咲恵さんは公園で待機して、殴りかかりそうになったら止めに入った。学校や友人の家にも何度も謝りに行った。

ある日、健太くんが学校で友人を殴り、大怪我をさせてしまった。年下の実子に対する嫉妬もひどく、咲恵さんは実子にも「里親をやめて」と言われてしまった。このままでは家庭が崩壊するし、学校にも地域にもいられなくなってしまう。咲恵さんはどんどん追い込まれていき、2年経った頃、健太くんを手放す決意をした。

健太くんは難しい子どもが育つ専門性の高い施設へと措置変更になった。入所する前、「帰ってこれるかな」と不安そうにつぶやいていた健太くんは、石井家に戻ることはできなかった。

健太くんちょうど今年、高校3年生になる。卒業と同時に、施設は退所しなくてはならない。咲恵さんは児童相談所を通して、この節目に健太くんに会いたいと思っているという。

「たった2年の付き合いでしかなかったけれど、どこにも頼ることができないのならば、せめて最後のセーフティネットにはなれるかもしれないですから」

それでも咲恵さん個人でできることには限界がある。

「施設で育った子どもたちが、人間が破壊されるような環境で育ってしまうことはやっぱり異常ですよ。国が社会的養護下にいる子どもたちに虐待をしているようなもの。お金ばっかりかかって、健太だってきっと自立はできないと思います。障害によって働くことが難しければ、納税者にはなれずに、生活保護を受けることになる。

親と暮らせない子どもたちには衣食住があればいいと思っているかもしれないけれど、それだけでは養護していることにはならないですよ。乳児院や児童養護施設で育てることが、世界水準でも異常だということを知ってほしいです」