居場所を失う若者と、残念な大人たち---この国の未来を考えさせられる3冊

【リレー読書日記・熊谷達也】
週刊現代 プロフィール

「居場所」を失った少女たち

そうした若者たちのさらに若年層である女子高校生の裏社会を、単なる取材以上に丹念に描いたルポルタージュが『女子高生の裏社会』である。

本書で取り上げられているのは「JKリフレ」(JK〈女子高生〉によるリフレクソロジー=個室でのマッサージ)や「JKお散歩」(女子高生と客とのデート)といった「JK産業」で働く少女たちの、赤裸々な実態だ。

著者自身が以前に「渋谷ギャル」生活の経験を持ち、現在は、居場所や社会的つながりを持たない十代の少女(著者の言う「難民高校生」)のサポート活動をしているだけあって、少女たちの悲痛な心の叫びがひしひしと伝わって来る。

著者がとりわけ懸念しているのは、第六章「表社会化する裏社会」で詳細に述べられている通り、家庭や学校には何の問題も抱えておらず、両親との仲もよくて学校での成績も良好、将来の夢もあり受験を控えているような「普通の」女子高生が、「リフレ」や「お散歩」の現場に入り込んできていることだ。

そうしたJK産業を操っている裏社会の大人たちは、「関係性の貧困」な少女たちの居場所づくりのプロで、それと同じことが表社会ではできていないという指摘は重要だ。指摘というよりは、著者の切実な訴えである。

本書を前にすると、第三次安倍改造内閣の「一億総活躍社会」という取って付けたようなスローガンなど、あっさり上滑りするばかりである。

そうした少女たちの本来の居場所となるべきなのは家庭と学校であるはずだ。ところがその片方を担う学校において、「教え方を知らない教員」が8割もいるというのが実態であると、正面切って論じているのが、三冊目の『残念な教員』である。

本書で言っている「残念な教員」とは、ニュースネタになるような破廉恥教員のことではなく、本業での「教え方を知らない」、その結果「生徒を成長させられない」教員だとのこと。

大手新聞社の記者からフリーランスのジャーナリスト、その後に教育者に転身した著者の、現在の教育現場に対する批判は、極めて辛辣だ。

読者が現役の教員であれば、憤りのあまり、本書を壁に投げつけたくなるかもしれない。だがそれは、真実を衝いている証拠でもある。

そして本書は、語り口は辛辣であるのだが、冷静な分析に基づいた、学校現場で実践できそうな具体的な提案やヒントが、数多く紹介されている。

その昔、中学校での8年間の教員生活ですっかり燃え尽き、やむなく教職を辞することになった私であるので、偉そうなことは全く言えないのだが、教職に携わっているすべての方に、一度は手に取ってほしい本だ。

タイトルだけで選んだ今回の三冊だったが、この国の未来を担う子どもたちに胸を張って渡せる世界を、我々大人がどうやって作っていくべきか、深く考えさせられる本ばかりであった。

『週刊現代』2015年11月14日号より

※この欄は大林宣彦、堀川惠子、熊谷達也、生島淳の4氏によるリレー連載です。