『超高速! 参勤交代 老中の逆襲』
著者・土橋章宏さんに聞く

インタビュー「私が書きました」
週刊現代 プロフィール

今作には、時代劇でお馴染みの南町奉行・大岡越前も登場します。藩主の政醇や、松平信祝も実在した老中なんですね。

ええ。八代将軍吉宗の時代の、実在した人物を数多く登場させています。悪役として信祝を選んだのは、物語に制約なく動いてもらうために、この時代の老中の中でもあまり知られていない人にしようと思ったからです。

信祝は前回以上にタイムリミットを早めた上、莫大な費用がかかる「江戸城天守閣の再建」まで命じようと企みます。

老中が諸藩の力を弱めようと考えた場合には、いろんなやり方があります。参勤交代もそうですが、もうひとつ藩にとって大変だったのが、幕府の命令で城や土木の工事を行わせる「手伝い普請」。実際には、湯長谷のような1万5000石の小藩にはさせなかったでしょうが、やろうと思えばやれたはずですし、資料を見ると薩摩藩などは大変な目に遭っています。

手伝い普請をいかに逃れるかというのが、各藩の江戸留守居役の難題だった。湯長谷藩の留守居役である秋山平吾は、無鉄砲な藩士が多いなか、ブレーキ役になる現実的な人物。彼が小太刀術の達人というのは、自分の力だけに頼らず、周りの物も上手に使って戦う小太刀術が、理論派の彼に最適だと考えたからです。

信祝はある野望を持って尾張柳生家と手を組み、幕府要人たちを暗殺していきます。刺客集団である「尾張柳生七本槍」と湯長谷藩士たちの死闘の数々は、山田風太郎の『甲賀忍法帖』などを思わせます。

そういって頂けると嬉しいですね。僕は昔から山田風太郎さんが好きで、決闘シーンはそのオマージュでもあります。20~30代にかけて、時代小説をたくさん読みました。池波正太郎さんから入って、隆慶一郎さんや北方謙三さんが好きでした。『影の軍団』などの時代劇も観ていたので、柳生一族は絶対出したかったんです。

家老の相馬兼続が海に突き落とされる場面など、スラップスティックなギャグも多いですね。

映画で相馬を演じた西村雅彦さんや、槍の名人・今村清右衛門役の六角精児さんの演技がコミカルで面白かったので、その影響を受けて、前作よりコミカルになっているかもしれません。相馬が舟から落とされる場面は、西村さんの映像を想定して書きました。

ちなみに政醇だけではなく、今村や一番年下の藩士・鈴木吉之丞も、湯長谷藩に実在した家臣なんです。「弓の鈴木」など、記録が残っています。

前作同様、とても明るくて読後感もさわやか。今までにない新しい時代小説だと感じました。今後はどんな作品を書いていきたいですか。

これからも、コメディ色の強い、楽しくて明るい小説を書いていきたいですね。今まで時代小説を中心に書いてきましたが、次作は初めての現代小説です。介護をテーマにしながら、エンタメ系で明るく乗り切っていく物語です。

(取材・文/伊藤和弘)

『週刊現代』2015年11月14日号より

超高速! 参勤交代 老中の逆襲
講談社/1400円

どす黒い野望の陰に見えてきた“徳川将軍家乗っ取り”計画。「時間・カネ・人が足りない」をはるかに超える難問が湯長谷の男たちに突きつけられた。東北の貧乏藩が再び絶体絶命の危機に…。

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