安倍政権「一億総活躍」の意味が、ようやく分かった
~なるほど、進次郎に逃げられたのも納得

鈴木 哲夫 プロフィール

また、「矢」という表現について言えば、前回の「三本の矢」は手段だったが今度の「新三本の矢」は具体的な数値目標で、そもそも「矢」の意味合いが違う。

私が特に矛盾していると疑念を持つのは、子育てや介護などの社会保障の部分だ。これらはすでにプログラム法を成立させて(2013年)、国の負担を減らし地方自治体や各家庭に押し付ける方向で進めていた。いまさら制度や施設建設や補正予算など手厚くするつもりだろうか。

「政策」ではなく、「国民運動」だった

言うことがバラバラ。これでは安倍政権の政策理念の一貫性が問われるのではないか。

とにかく「一億総活躍社会」だと言ってやたらいろんなことをぶち上げたが、身内からでさえ「あまりにもとっ散らかっている」(自民党ベテラン議員)との声も出ている。

だが、こうした状態になっていることについて、冒頭の経産省OBの「名前を変えただけの同じ船」という解説は「なるほど」と頷かせるものがある。

「よく見れば分かるんですが、一億総活躍社会という概念は、第二次安倍政権になって出てきた様々な政策を言い換えているだけです。それを新たにまとめなおして、キャッチフレーズを作りたかったんでしょう。目的は参院選対策と世論対策という側面が大きいのです」(同OB)

確かに、安倍首相が記者会見で多少説明した「新三本の矢」なるものを見ても、たとえば「GDP600兆円達成」はこれまで進めてきた地方創生政策と関連するし、「出生率を上げる」点についても、これまでの女性活躍政策で同じようなことをやってきていた。

「つまり、新しい何かをやろうとしても、並べる政策がもう頭打ちという現状がありますね。(経産省の)現場からそんな声も聞かされます。新味を出すためには、今までのものを名前を変えて並べ替え、新たなキャッチフレーズを付け直すしかないということです」(同OB)

事実、10月19日には加藤勝信・一億総活躍担当相と、石破茂・地方創生担当相との間で初の政策のすり合わせが行われたが「そこで行われたのは、新しいものを考え出すのではなく、これまでにある地方創生政策のどれを一億総活躍に移動させどれを残すか、といったすみ分けに過ぎなかった」(自民党政調幹部)という。

また、女性や介護など社会保障に関わる部分も、すでに厚労省が進めている政策について「一億担当とのすみ分け調整になると思う。新しいものをとはならない」(厚労省幹部)という。

さらに、この「一億総活躍社会」の官邸の狙いについて、ある自民党ベテラン議員は「国民運動」という言葉を使い、こう説明した。

「中身がないないとあなたは言うが、そもそもそれは当然、まったく不思議じゃない。だってこの一億総活躍社会は、官邸が『政策』ではなく、『国民運動』として考えたみたいだからね」