よみがえる勝新太郎「伝説の人生相談」〜笑いあり、怒りあり、下ネタありの勝新節であなたの悩みを一刀両断!

田崎健太『偶然完全 勝新太郎伝』発売記念
田崎健太, 勝新太郎

妻が浮気してる、だと?俺は玉緒の亭主だぞ!

Q.私の仕事は営業で、月のうち半分は出張で家に帰りません。そんな生活が寂しいのか、私の妻はよく外出していました。その妻ですが、最近様子がおかしいのです。どうやら浮気をしているようです。

浮気といえば、実は2年前に、私の浮気が原因で離婚寸前までいったことがありました。そんな私が妻を責める資格などないのかもしれませんが、男とは身勝手なもので、どうしても気になってしょうがありません。人生経験の豊かな勝先生、ズバリ妻に問いただしたほうがいいのでしょうか? あるいは他にいい方法があるのでしょうか? 教えてください。(神奈川県・ペンネーム『人生色々』会社員・28才)

A.俺がこうして皆の相談相手になれるのも、みんなの前に出て舞台に立てるのも、女房のお陰だ。俺の女房は「中村玉緒」っていう女優をしている。

玉緒にいつもいうんだ。
「お前は宝だ。家宝だ。お前はうちの家宝だ。だから寝てなさい」
かほうは寝て待てってな。

そんな玉緒のような女房だって、たった一回しかない人生だ。その一回の人生で、男が俺だけで終わるっていうのは寂しいじゃないかって気がするぜ。

「よお玉緒。芝居で旅に行ったり、映画撮ったりしてる時、誰か口説きにくる奴はいるかい」

「そらいまっせ。百メートルぐらいまでしか来まへんけど。あんまり近くまでは来てくれまへんで。みんな知ってますがな勝新太郎の女房だってこと。誰が手を出してくれます? 勝新太郎の女房に。みな怖がってまっせ、ほんまに百メートルぐらいまでしか来てくれまへん」

俺は、
「でも、手を出す奴がいたら出させたらいいじゃあないか。玉緒もその気になる相手だったら、そうなってもいいじゃあねぇか。俺があいだをとりもってやるよ」

「ほんまに? ほんまにパパ、そんなこと思ってはるの?」
「ああ、思っているよ」

その話を玉緒が友達に聞かせたらしい。その友達に、
「勝さんは玉緒さんのことを愛していないのよ」
っていわれちゃった。

もし玉緒がそういう時を過ごしたかったら、誰がとりもってやれるんだい。俺しかいねぇじゃないか。

俺は玉緒の亭主だよ。常識では考えられないだろう。だから俺は、世間の常識と経験でものをいう人とは合わない。

不義密通は重罪だ。でも、その罪を隠してあげられるのは亭主しかいないんじゃないのか。その罪をまるめて飲み込んで、一生俺は天国に持っていくぜ。

「こんな気持ちを持っている亭主はいけませんか?」
俺がお前さんに質問したら何て答える?

お内儀(かみ)さんに惚れてるのもいい。愛すのもいい。もっと裕福な気持ちになれねぇか。お内儀さんが浮気しただろうとか、探偵に調べさせるとかそういうさもしい気持ちは捨てちゃえ。共に白髪になって灰になった時、二人で笑いながらお墓の中で、昔ばなしに花を咲かせればいいんじゃねぇのか。

二人で手に手を取り合って極楽道に旅をしな。二人の残した足跡が残っていく。まるで文楽の浄瑠璃のラヴストーリーみたいに、二人の残した足跡が「とどけ、この世の極楽寺へ」と語るよ。

(1994年9月~12月に『週刊ポスト』誌上で連載された「勝新太郎の平成問答 何処で果てよと」より抜粋)

田崎健太(たざき・けんた) 1968年京都生まれ。早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て、99年に退社、ノンフィクション作家に。近著に『真説・長州力』『球童 伊良部秀輝伝』などがある。早稲田大学スポーツ産業研究所招聘研究員

著者: 田崎健太
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