よみがえる勝新太郎「伝説の人生相談」〜笑いあり、怒りあり、下ネタありの勝新節であなたの悩みを一刀両断!

田崎健太『偶然完全 勝新太郎伝』発売記念
田崎健太, 勝新太郎

Q.「上司を怒鳴りたい」A.「怒りたいときに怒れバカヤロ!」

Q.26才の会社員です。課長が大嫌い。いつも僕のことをどなりちらす課長にジッと耐えてきた3年間です。ただ、最近は耐えられなくなり、どなり返したい衝動にかられます。

「うるせェ、バカヤロ!」とどなりたい気持ちをグッとこらえていますが、いつか爆発しそうです。勝さんは上司や先輩をどなりつけたことはありませんか? それと、僕はジッと我慢したほうがいいのでしょうか?(愛媛県・匿名希望)

A.忠臣蔵のもとは殿中松の廊下で、上司である吉良上野介に浅野内匠頭が我慢の根が切れて刃傷に及んだ。そこで、四十七士という忠心の家来たちの話が生まれたんだよ。我慢の根が切れて、怒った殿様は家来たちのことを考えて後悔しながら切腹したのかなぁ。

俺がある映画の監督と仕事をした時だけど、俺は役者と監督は五分と五分だと思っているけれど、世間は監督のほうが偉いと思っている。俺のやる役は監督よりもはるかに偉い歴史上の人物だ。

それなのに、
「あんたのここが気に入らない」
「俺の演出を信用しないのか」
態度物腰までああしろ、こうしろ。

とんでもねぇ! 貴様ら下郎にとやかくいわれる筋合いはない。下がりおろう」
って、怒っちゃって、俺はその映画をやめた。

もしも俺がその映画をやってりゃぁ、面白い映画になったろう、映画界のためになったろう、とか皆はいうけども、もう一遍あれと同じ場面にぶつかったら、
「よし、今度は我慢しよう」
と、思ってもやっぱり、また同じ言葉を吐いて怒ってやめちゃうだろう。

これは怒るべきか、我慢すべきかというようなことは、俺は考えたことはないんだよ。怒るべきかと考えたときにはもう怒っちゃったあとなんだよ、俺はな。

「今まで我慢していたけれど、もう駄目だ」

三年目にもう我慢できないっていうことはギブアップだ。それまで、ギブアップしないように努力したけど、遂に我慢ができなくなった。

自分の中に持っている怒りというのはいつかは出てくるんだから、怒りたくなった時に怒っちゃえ。我慢した分だけでも勉強になったと考えて。

怒っちゃった後に、それがよかったのかどうかということの、自分自身に対する『自分研究』ってのが、そこから生まれてくるんだよ。

玉緒に、
「パパ、今怒ったら損ですよ。今怒らないで、明日になったら、その怒る気持ちがなくなって、ああ、昨日怒らないでよかったなぁと思いますよ」
といわれる。

「俺は今すぐ怒るんだ。明日になったら、お前怒れなくなっちゃうじゃないか。忘れちゃうじゃないか」

ギブアップするってぇのは男として負けたってぇ意味のギブアップじゃないよ。ここでギブアップすることが、自分の『人生マラソン』においてのネバーギブアップにつながるんだから。

でも、『怒る』ことにかけては、俺ぐらいはやくギブアップする奴はいないからなぁ。

……この相談は俺じゃない人に相談したほうがいいんじゃないのかな。